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被団協「脱原発」を強化 定期総会 廃炉など国に要求方針

■記者 岡田浩平

 福島第1原発事故を受け、日本被団協は8日、東京都内で開いた定期総会で運転停止中の原発廃炉など「脱原発」を国に強く求める本年度の運動方針を決めた。「エネルギー政策の転換」を主張してきた従来の立場からさらに踏み込む。

 総会では「放射線被害を最も知る被爆者が早く原発を止めろというべきだ」「エネルギー政策転換が進んでいない」などの意見が相次いだ。「原子力に替わるエネルギー政策を求める」としていた方針案は、脱原発をより明確に表現する方向で承認した。

 田中熙巳(てるみ)事務局長は総会後の記者会見で、定期検査中の原発廃炉や運転中原発の将来的な停止など具体的な要求を方針に盛り込む考えを示した。文言は7月中旬の代表理事会で決め、国や各政党への要請につなげる。

 被団協によると1956年の結成直後は、電力業界で働く被爆者に配慮して反原発を明確にしない時期もあった。しかし、米国スリーマイルアイランド、旧ソ連チェルノブイリの原発事故後はエネルギー政策の転換を主張してきた。

 1990年には原発の新設・増設に反対▽事故が起きれば操業停止―などの方針を決定。新潟県中越沖地震での柏崎刈羽原発の被災を受け、2008年には原発の耐震補強と原子力依存政策の脱却を国に申し入れている。


被爆者援護法 「国の償い」明記盛る 被団協 改正要求を決定


■記者 岡田浩平

 日本被団協は定期総会最終日の8日、被爆者援護法の改正要求を決めた。原爆被害に対する国の謝罪を求め、被害への「償い」と核兵器廃絶を法の趣旨として明記する点などを盛り込んだ。近く推進本部を設け、運動を具体化する。

 改正要求は5月に代表理事会でまとめた最終案通り承認された。「戦争によって原爆被害をもたらし、被害を放置、拡大してきた」として国の謝罪と償いを求める姿勢を前面に打ち出す。

 具体要求では現行の諸手当を見直して全被爆者向けの「被爆者手当」を創設し、病気に応じ加算する仕組みを提案。国の責任で医療、介護の提供を求める。ほかに原爆死没者の遺族への弔慰金などの支給▽被爆2世、3世の実態調査▽被爆者健康手帳の交付要件緩和▽在外被爆者への法の完全適用―も掲げている。推進本部の内容は7月中旬に開く代表理事会で詰める。

 被団協は結成以来、「戦争による原爆被害を国の責任で償わせることが、再び被爆者をつくらない道筋になる」と主張。1995年施行の現行法は、償いの精神がない▽原爆被害を放射線による健康被害に限定している―などとして認めず、原爆症認定集団訴訟の終結へ道筋がついたのを受け、2009年9月から改正要求を議論してきた。

 総会では3人のうち1人欠員だった代表委員に、広島で被爆した岩佐幹三事務局次長(82)=千葉県船橋市=が昇格する役員人事も決めた。


<解説>若い力・発想が実現の鍵

■記者 岡田浩平

 日本被団協が定期総会で決めた被爆者援護法の改正要求は、結成以来訴えてきた「国の償い」を求める運動を再強化する意味を持つ。ただ、老いる被爆者たちにとって実現へのハードルは高い。

 「ほとばしるようなエネルギーを出さないといけない」。総会後の記者会見で木戸季市事務局次長は強調した。「再び被爆者をつくらせない」ために国の謝罪と償いを求める理念に対し、戦争被害の受忍を求める国の姿勢が立ちはだかる。

 被団協でも2001年から原爆症認定制度の改善を求めて集団申請や訴訟に注力したことで、国の償いを要求する議論や運動が停滞した感は否めない。理念もいいが、被爆者の生活を守る運動を展開すべきとの声もある。

 総会では改正要求の議論に1時間40分を割く予定だったが最後は討論が途切れ、今後の具体的な運動論への意見も出なかった。運動を支え、広げるには被団協内外の若い力、発想を取り入れる工夫も必要だ。

(2011年6月9日朝刊掲載)

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