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地方の針路’15統一選 情報共有 認識の差露呈 岩国基地燃料漏れ

 在日米軍再編に伴い、格納庫や住宅などの建設が進む岩国市の米海兵隊岩国基地。その基地内で1月20日、中国四国防衛局が工事を発注した航空機給油設備から地中に大量の燃料漏れが発生した。防衛局は山口県に報告せず、国と県の情報共有をめぐる認識の違いが浮き彫りになった上、事案が公表されない可能性さえあった。2017年ごろまでに予定される空母艦載機移転。安心安全対策を進める上で不安を露呈し。(野田華奈子)

 「特異な事案にもかかわらず、速やかな報告がなかったのは誠に遺憾」。村岡嗣政知事は県議会会期中の3月3日、報道陣の前で不快感をあらわにした。矛先は防衛局にあった。

市には伝える

 県に外部から燃料漏れの情報が寄せられたのは、発生から1カ月以上が経過した2月26日。防衛局は岩国市には伝えていた。

 問題の設備は、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)から昨夏移転してきたKC130空中給油機へ燃料供給するため、3月末完成をめどに建設中だった。米軍へ引き渡す前の試験で、地下配管から最大約1万5千リットルが漏れたという。ドラム缶に換算すると75本分に相当する量だ。

 防衛局は県に報告しなかった理由を「基地外への流出がなかったため」と説明。環境法令に照らして報告義務は生じない事案だったとする。速やかな情報提供を求める県の申し入れを受け、芹沢清局長は3月13日、県庁に村岡知事を訪問。発生直後に報告しなかったことを謝罪し、「公表の在り方も相談したい」との考えを示した。

 基地をめぐり意見交換する機会が多い市と国に対し、県は基本的に「地元の意向を尊重する」立場。そもそも防衛局が知事の言う「特異」な事案と捉えていたか疑問だ。燃料漏れが公になったのは同3日の県議会一般質問。質問がなかったら、いまだに公表されていない可能性もある。

 県は情報を得て3日までの間、防衛局への照会や環境法令の確認に追われたと説明。基地問題を担当する大谷恒雄・総務部理事は「普段から内部の様子が分かりにくい基地での出来事。丁寧に情報公開することが住民の安心につながる」と指摘する。市がこの間、国に公表を促すことはなかった。

連携再構築を

 岩国爆音訴訟の原告の一人で、基地から約150メートルの距離に住む流田信之さん(71)は「燃料漏れで公表されないのなら、他にも重大な事案が隠されているのではと疑う」と憤る。

 岩国基地には、17年ごろまでに米海軍厚木基地(神奈川県)から艦載機59機が移転を予定する。市中心部の愛宕山地域開発事業跡地では米軍住宅や運動施設の整備も進む。住民は新たな騒音や危険にさらされる。

 さらに国が整備した施設が米軍に提供された後、事故や事件が起きたらどうなるのか。日米地位協定によって日本の法令は適用されない。国が米軍に対するチェック機能を果たさなければならず、その前提である県、市との連携の再構築が急がれる。

 「今回の事案を教訓に、事件事故や環境汚染などを想定して、県市は国にきちんと情報提供させるルールを作るべきだ」。愛宕山を守る市民連絡協議会の岡村寛世話人代表(71)は提案する。

(2015年4月11日朝刊掲載)

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