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社説・コラム

天風録 「伝承者の重責」

 30年後のわが街をどうするか。ほらふき合戦でなく、財源も考えた政策を若者が比べ合う催しがある。「未来自治体」と呼ぶコンテスト。NPO法人の音頭で、仙台市や神奈川県鎌倉市などが取り組んでいる▲降って湧いた消滅予測で、自治体は尻に火がついていよう。もともとは、投票から足が遠のく世代へのてこ入れ策である。鎌倉では実際、市の選管が主催を買って出た。「あなた任せ」の政治こそ大敵とみたのだろう▲統一地方選の前半を締めくくるきのう、投票率は総じて振るわなかった。地方政治を「わがこと」と受け止める有権者がこの程度しかいないはずはない。棄権も私たちの選択というほかないのだが、何とも引っ掛かる▲今回は、無投票当選の議員もやたら目に付いた。広島県議選でも過半数の選挙区が、スタートを切った途端にはやゴール。明日を占うべき論戦の立ち消えた所が将来、消滅自治体の地図と重ならないよう祈るばかりだ▲冒頭の催しでは、若者にこう問い掛けるのがこつだという。「あなたが首長だったら」。地に足の着いた、責任ある提案を促すに違いない。それは自治への関心を呼び覚まし、30年後の首長候補も育むはずである。

(2015年4月12日朝刊掲載)

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