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米軍側 受け入れに含み 米艦載機訓練 候補地に馬毛島 

■編集委員 山本浩司

   政府は、鹿児島県西之表市の馬毛島が、米海軍原子力空母ジョージ・ワシントン艦載機の陸上空母離着陸訓練(FCLP)の恒久施設建設候補地であることを県に正式に伝えた。艦載機の米海軍厚木基地(神奈川県綾瀬市など)から米海兵隊岩国基地(岩国市)への移転問題は新たな局面を迎えた。

 伝達の前日の7日、在日米海軍が硫黄島(東京都)でのFCLPを2年ぶりに公開。説明役の同海軍ピーター・ラッシュ副司令官(大佐)は、中国新聞の質問に「馬毛島の名前は報道で知った。建設候補地について、日本政府から正式な連絡はない」と答えた。

 硫黄島での訓練については「飛行機は、訓練に必要なだけの燃料を搭載する。1本しかない島の滑走路が訓練中に突然使えなくなった場合、周囲に着陸する場所がない」と、これまでの説明を繰り返した。

 その一方で、「米海軍の規定が定める100カイリ(約180キロ)以内に着陸できる施設があれば、母基地から訓練施設までの距離が100カイリ以上でも問題はないのか」との質問には「大きな問題ではない」と即答した。

 馬毛島についてはこれまで、米海軍は岩国からの距離(約400キロ)を懸念しているという見方が強かった。しかし、同島の半径180キロ以内には、航空自衛隊新田原基地(宮崎県)、海上自衛隊鹿屋基地(鹿児島県)があり、候補地となりうることを初めて認めたことになる。

 しかし副司令官は「われわれとしても候補地の風向きや周囲の環境などを調査しなければならない」とも強調。日本政府の一方的な判断だけでは、最終候補地とならない可能性を示唆した。

 副司令官は、候補地選定の遅れが艦載機移転スケジュールに影響するかどうかについて「分からない」とする。しかし、日本政府が候補地周辺の自治体と住民、在日米海軍それぞれの交渉過程を誤れば、普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移転に続く両国間の新たな火だねとなりかねない。

在日米海軍空母艦載機の移転問題
 空母艦載機の厚木から岩国への移転は、2006年5月の「在日米軍再編実施のためのロードマップ」では、14年までに完了するとしている。一方、陸上空母離着陸訓練(FCLP)の恒久的な施設の候補地選定の時期とする「09年7月またはその後のできるだけ早い時期」は実現していなかった。

 同施設が建設されても、在日米海軍が「通常の訓練」と規定するタッチ・アンド・ゴーは岩国で日常的に繰り返されるとみられ、基地周辺への騒音が懸念されている。

(2011年6月10日朝刊掲載)

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