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【ナガサキ情報~西日本新聞から】ロシアから返信 「核の傘に依存」「見当違い」と反論  

ロシアが返書 核先制使用演習で抗議文送付の長崎市に

 長崎市は10日、ロシア軍が3月に核兵器の限定的先制使用を想定した大規模演習を行ったことを受けて市が送った抗議文に対し、ロシア側から「根拠のない言いがかり」などと反論する返書が届いたと発表した。ロシアは書面で、日本が米国の「核の傘」に依存していることを指摘し、広島と長崎に原爆を投下した米国こそ「抗議の対象ではないか」としている。

 返書はアファナシエフ駐日大使の署名。「ロシアは核拡散防止条約(NPT)体制を強力に支持し、核兵器のない世界を目的としている」と説明した上で「日本がどこの国の『核の傘』に依存しているかはよく知られている。このことは、被爆者の平和への思いとまったく矛盾している」と指摘した。

 西日本新聞の取材に対し、田上富久長崎市長は「被爆地の思いを受け止めてもらえず残念だ。核保有国がけん制し合えば、核を取り巻く環境は危険になる。米ロの核超大国は批判し合うのではなく、率先して核軍縮に取り組んでほしい」と話した。

 長崎市は3日、ロシアのプーチン大統領と駐日大使宛てに抗議文を送り、被爆者のこれまでの取り組みを愚弄(ぐろう)し、NPT体制に悪影響を与えるなどと批判していた。抗議文を送った広島市にも10日までに、同様の返書が届いた。

ロシアから返信サイド 「被爆者の思い届いてない」「同様に見ている国々ある」

長崎 「核の傘」依存改める声も

 ロシア側から「根拠のない言いがかり」と反論する返書が届いた10日、長崎県の関係者からは「被爆者の思いが届いていない」とロシアの姿勢を批判する声が上がる一方、米国の「核の傘」に依存する日本政府の態度を改めるよう求める意見も相次いだ。

 被爆者5団体としてロシアに抗議文を送った長崎県平和運動センター被爆者連絡協議会の川野浩一議長(75)は「問題点のすり替えで居直りだ。反省がなく、無礼な文書に腹が立つ」と憤った。長崎原爆被災者協議会の山田拓民(ひろたみ)事務局長(83)も「ロシアは被爆者や核軍縮に向かう世界の人々の気持ちを分かっていない。米の脅威があるからというのは口実にすぎない」と批判した。2人とも「核の傘」への依存については「今後も政府に脱却を求めていく」と述べた。

 長崎大核兵器廃絶研究センター(RECNA)の中村桂子准教授(核軍縮)は「言いがかりで非常に失礼な文書」と指摘。その上で「核の傘に依存する日本の姿勢を突きつけられた。ロシアと同じように日本を見ている国があることも事実だ。被爆地の声が真に意味を持つためには、政府が態度を変えなくてはならない」と語った。

(西日本新聞・上野洋光、田村真菜実)

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