×

ニュース

原発反対派 結束示す 漁業補償金祝島分配分案否決 声そろえ「もらわぬ」

 中国電力が山口県上関町の上関原発建設計画で支払う漁業補償金の配分案が14日、柳井市であった県漁協祝島支店(上関町)の組合員集会で否決された。島ぐるみで「建設反対」を貫いてきたものの、2013年2月に一転して祝島支店が受け取りを議決していた。配分案の否決で、受け取り拒否の姿勢をあらためて示した。(久行大輝、友岡真彦)

 組合員集会があった柳井市柳井の県漁協柳井事業所前には、原発反対派の組合員や島民たち約50人が早朝の定期船で集結。県内各地の反原発団体の約60人もバスや車で駆け付けた。「原発絶対反対」などと書いたのぼりや横断幕を掲げ、集会の行方を見守った。

 准組合員として出席した上関原発を建てさせない祝島島民の会の清水敏保代表(60)が午前10時すぎ、否決を報告すると大きな拍手が湧き起こった。島民たちは「補償金はもらいませんよ」と声をそろえて喜び合った。清水代表は「この勢いで2年前の受け取り議決を覆したい」と話した。

 県漁協本店(下関市)は反対派島民たちの抗議を警戒。柵を設置し警備員を配置したが、混乱はなかった。中立派で議長を務めた支店の恵比須利宏運営委員長(71)は「地元で開きたかった。結果を受け入れる」と話した。

 13年2月の受け取り議決は、漁獲と魚価の低迷が続く中、支店の赤字を穴埋めする組合員の経済的な負担が大きくなっていることが影響したとみられる。

 今回、否決の議決権行使という形で結束を再確認したものの、今後、補償金を受け取りたい組合員の要請を受け、本店が集会を再度開く可能性も残る。準備工事が中断する中で「原発はできない」との声も島民の中にはあり、予断を許さない。

 夫が漁師という祝島の美容師橋本典子さん(55)は「漁獲が減って厳しいが、それ以上に原発は危ないし恐ろしい。子や孫の代まで自然を守るのが私たちの宿命」と力を込めた。

<祝島の漁業補償金をめぐる主な動き>

1982年 6月 当時の上関町長が町議会で住民合意を前提とした原発誘致を表明
  83年 4月 祝島漁協(現県漁協祝島支店)が原発反対を決議
2000年 4月 中国電力が四代、上関の両漁協、共同漁業権管理委員会と漁業補償契約を締結
      5月 中電が漁業補償金約125億円の半額を支払い。祝島漁協は約5億4千万円を拒否
      6月 祝島の漁業者が漁業補償契約無効確認を求め提訴。08年10月に敗訴確定
  08年10月 知事が中電に建設予定地の公有水面埋め立て免許を交付
     11月 中電が残りの補償金を県漁協に支払い
  09年 2月 祝島支店が無記名投票で補償金受け取り拒否を議決
  10年 1月 祝島支店が挙手採決で2度目の受け取り拒否を議決
      5月 法務局に供託していた祝島支店分の補償金約5億4千万円を県漁協が回収。預かり額が約10億8千万円に
  11年 3月 福島第1原発事故発生。中電が建設予定地の埋め立て工事を中断
  12年 2月 祝島支店が挙手採決で3度目の受け取り拒否を議決
  13年 2月 祝島支店が無記名投票で受け取りを議決
      6月 悪天候で補償金配分案を決める組合員集会中止
      8月 反対派島民たちの抗議行動で組合員集会中止
     10月 組合員集会開催決定後、会場が確保できていないことが判明し中止
  14年 3月 反対派島民たちの抗議行動で組合員集会中止
  15年 4月 組合員集会が柳井市であり、配分案を否決

(2015年4月15日朝刊掲載)

年別アーカイブ