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16都市「リーダー」担う 平和首長会議 新体制始動 核禁止条約へ結集

 2020年までの核兵器廃絶へ、平和首長会議(会長・松井一実広島市長)は4月、世界各地域の「リーダー都市」が活動を引っ張る新体制をスタートさせた。まず広島市や、核超大国の米国・アクロン、ロシア・ボルゴグラードなど16都市が就任。原爆の非人道性を訴え、都市の力を結集して核兵器禁止条約の実現を国際社会に迫る。(田中美千子)

 1日時点で160カ国・地域の6649都市が加盟。広島市は、1559区市町村が加わる日本を管轄する。ボルゴグラード、フランス・マラコフは各国内を、英国マンチェスターは国内とアイルランドがエリア。アクロンは未定。オーストラリア・フリマントルやブラジル・サントスは国内の一部地域を担う。

 平和首長会議は、核兵器廃絶を柱にしつつ地域性を踏まえた活動を強化しようと13年8月、広島市での総会で決めた行動計画にリーダー都市の創設を盛り込んだ。活動実績を踏まえ、事務局の広島平和文化センターが各都市に就任を打診していた。ほかに8都市が検討中で、30都市を目標に増やしていく構えだ。

 行動計画で掲げた1都市につき年2千円の「メンバーシップ納付金」の徴収も今夏にも始める。インターネット送金システムで全加盟都市に請求するが、納めなくても罰則はない。加盟都市の記者や外交官の被爆地訪問、被爆樹木の苗木普及などの事業費に充てる。

 核拡散防止条約(NPT)再検討会議会期中の今月29日、米ニューヨークの国連本部で初の集会を開き、核兵器禁止条約の実現へアピールする。一部のリーダー都市も参加する。会議事務総長で広島平和文化センターの小溝泰義理事長は「活動基盤を整え、市民社会の力で核兵器廃絶に近づきたい」と話している。

【解説】組織の質 高める狙い

 平和首長会議の加盟都市は6649に上るものの、活動に熱心なのはごく一部で、実績がない「名ばかり加盟都市」が多い。これほどの数を核兵器廃絶を実現する力に変えるため、組織の質を高めるのが新体制の最大の狙いだ。

 冷戦期の1982年、広島市の荒木武市長(当時)の提案で「世界平和連帯都市市長会議」として発足。99年から12年間の在任中、海外で積極的に活動をPRした秋葉忠利前市長の下で加盟都市を464から4680まで伸ばした。今は、加盟都市の人口で換算すると約10億人、地球の7分の1に及ぶ。

 2011年にバトンを継いだ松井一実市長は数だけでなく、中身の伴った組織への変革を意識してきた。外交官出身で広島平和文化センターの小溝泰義理事長を21都市へ派遣し、リーダー都市就任を口説いた。会費制導入については、負担金ゼロで入会時の敷居を下げてきただけに加盟都市から反発も懸念されたが、低額に抑え、参加意識を高めるとの狙いに理解を得た。

 リーダー都市では英マンチェスターが国内で被爆樹木の苗木を広める活動を始めたほか、フランス・マラコフ市、オーストラリア・フリマントル市が担当エリアの都市を集めて会議を開く動きも出ている。

 国際社会では核兵器の非人道性に焦点を当てて非合法化を訴える声が高まっている。都市の底力を引き出し、目標である20年までの核兵器廃絶へ導く-。それを主導するのは「世界のリーダー都市」である広島市にほかならない。(田中美千子)

(2015年4月17日朝刊掲載)

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