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被爆米兵追跡の集大成 西区の研究家 森さん初出版

■記者 田中美千子

 捕虜となって広島で被爆死した米兵の足どりを追い続けてきた広島市西区の歴史研究家、森重昭さん(71)が初の著書「原爆で死んだ米兵秘史」を出版した。約20年の調査の成果をまとめた。

 四六判、250ページ。日本空襲のために飛来した米軍機が攻撃を受けて墜落し、乗組員が捕虜となった経緯や、12人が原爆で死亡した状況を、目撃者や元同僚の証言などを基に再現した。

 中国軍管区司令部で被爆したとされる米兵2人の死亡診断書をはじめ、入手した貴重な資料や米兵の生前の写真なども掲載。米国の遺族との交流を通じて知った苦しみにも触れている。

 森さんは爆心地から約2.5キロの己斐町(西区)で被爆。被爆米兵の存在を知り、1990年から証言を丹念に集め、膨大な資料を調査してきた。核拡散に歯止めがかからない現状を懸念し、5年前から本の執筆を開始した。「歴史の陰に隠されてきた被爆米兵の存在を伝えることで、戦争の非人道性が伝われば幸い」と願う。光人社から3000部を発刊した。2000円。

(2008年7月25日朝刊掲載)

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