中国経済クラブ 講演から 急展開する日朝・日韓関係の行方 コリア・レポート編集長 辺真一氏
15年4月24日
領土・慰安婦問題 互いに歩み寄りを
中国経済クラブ(山本治朗理事長)は23日、広島市中区の中国新聞ビルで講演会を開き、コリア・レポート編集長の辺真一氏が「急展開する日朝・日韓関係の行方」と題して話した。日韓関係のこじれを解決するには、領土問題と慰安婦問題で落としどころを探るなど、互いに歩み寄るのが最善の策と述べた。要旨は次の通り。(山本乃輔)
日韓関係は政府レベルでも、国民レベルでもぎくしゃくした状態が続いている。2013年に朴槿恵(パク・クネ)大統領が就任した際には、島根県の竹島(韓国名・独島(トクト))に自ら上陸した李明博(イ・ミョンバク)前大統領の時代に比べれば日韓関係が良くなると予想していたが、見事に外れた。ネックは依然として領土問題と、慰安婦に代表される歴史認識の対立だ。
竹島に関しては、韓国が実効支配しており所有権を主張して譲らない。だが、お互いに古い巻物を持ち出して「うちの方が昔から住んでいた」と言い合っても仕方ない。例えば元通りの無人島に戻して、海底資源は両国で共同開発するといった解決策を探るべきだ。
慰安婦問題では、韓国側がソウルの日本大使館前に慰安婦の像を設置した。私は「隣人の嫌がることをすべきでない」との考えから、こういう行為は望ましくないと思う。一方、賠償問題は日韓基本条約で決着済みという声もある。この問題が終わっていないのは、元慰安婦にお金が渡っていないからだ。
今後、両国の局長級会談を経て、安倍晋三首相が「謝罪に近い遺憾の意」を示し、日本大使が元慰安婦一人一人に謝罪してお見舞金を渡せばけじめがつく。韓国側もそうやって終わらせたいと願っている。産経新聞の前ソウル支局長の訴訟の件でも出国禁止を解除するなど、韓国側が日本との関係を前進させようとしている様子が見て取れる。
だが、公的資金を賄賂とした汚職事件が問題となり、朴政権の支持率は降下中。国民の不平不満をそらすため、反日機運をあおって政権を維持するのが歴代の政策だった。安倍首相が好ましくない発言をすればさらに日本にこぶしを振り上げるだろう。
北朝鮮の拉致問題について。昨年5月にスウェーデンのストックホルムで日朝合意がなされ、拉致被害者や特定失踪者、北朝鮮残留日本人の再調査が始まった。だが、開始から半年たっても北朝鮮は無反応。日本は在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)議長宅を家宅捜索し、北朝鮮は日朝協議をしない、再調査をやめるなどと反発している。
このストックホルム合意では、調査終了時期や拉致被害者が最優先との記載はない。ただ、この問題を日本が重視していることを北朝鮮は当然認識している。何も言わないのは、最後の切り札としてとっておきたいからだと考えるのが自然だ。
北朝鮮と日本には領土問題や歴史認識の問題がないため、拉致問題を解決すればそれなりの経済協力ができるパートナーになり得る。金正恩(キム・ジョンウン)第1書記もそれを望んでいるだろう。インフラ整備や技術提供などをちらつかせながら、拉致問題でうそ偽りのない対応を求めるべきだ。
ピョン・ジンイル
明治学院大文学部卒。71年、朝鮮新報社入社。80年に退社し、82年に朝鮮半島専門誌「コリア・レポート」を創刊。現在まで編集長。東京都生まれ。68歳。
(2015年4月24日朝刊掲載)