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核なき道へ無言の歩み 新着展に148点 原爆資料館

■記者 野田華奈子

 原爆資料館(広島市中区)で17日、昨年度に寄贈を受けた被爆者の遺品などの「新着資料展」が始まった。被爆者や遺族が長年保管していた遺品の数々は時を経て原爆の悲惨さを訴え掛けている。

 表面が焼けた革靴は安佐北区の横田靖子さん(75)が寄贈した。崇徳中2年だった兄の敏行さん=当時(14)=が被爆時に履いていた。建物疎開の作業で中区八丁堀付近にいた敏行さんは、全身に大やけどを負いながら安佐北区狩留家の自宅まで歩いて帰った。家族の看病を受けたが、8月9日に息を引き取った。

 自宅で靴を保管してきた横田さんは「兄は家に帰りたい一心だったろう。多くの方に見てもらい、原爆の恐ろしさを伝えられれば、兄もきっと喜ぶはず」と語った。

 会場には、原子雲を最も近くから撮影した故深田敏夫さんが大芝公園(西区)一帯の惨状を収めた写真や、母の形見の市松人形、寺の焼け跡から拾い集めた仏具など42人から寄贈された148点が並ぶ。来年の6月17日まで。

(2011年6月18日朝刊掲載)

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