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連載・特集

ひろしまFF2015 未来へ脈々 夢の花舞台 <上> 受け継ぐ心 平和の願いを歌に書に

 2015ひろしまフラワーフェスティバル(FF)が5月3~5日、広島市中区の平和大通り一帯で開かれる。被爆70年の年にある39回目の「花と平和の祭典」。平和を願う音楽祭で歌手や子どもが思いを一つにする。市民の育てた花が会場を彩る取り組みは5年目を迎え、パレードやステージに出場する参加者も多彩になった。晴れの舞台に臨む人たちの意気込みに迫った。(加茂孝之)

 〽語ろうよ 川に向かって 怒り、悲しみ、優しさを―

 川の流れのようにゆったりしたメロディーに合わせ、広島市中区の神崎小で児童約150人の澄み切った歌声が響く。曲は漫画「はだしのゲン」の作者、故中沢啓治さんが作詩した「広島 愛の川」。感情を抑えた言葉で戦争の悲劇や平和の尊さを訴え、歌手加藤登紀子さん(71)がCD化した歌だ。

 3~6年生145人は5月4日夕、平和記念公園のカーネーションステージである被爆70年企画「ピース・アクト・ヒロシマ音楽祭」のエンディングに出演する。同校は中沢さんの母校。加藤さんや広島ゆかりの歌手たちと合唱する。

 詩に曲を付けた作曲家山本加津彦さん(35)=東京都三鷹市=の呼び掛けをきっかけに、同校で歌唱が始まった。山本さんは24日、同校を訪れて児童に指導し「曲の最後は笑顔で」「多くの人の前でも堂々と歌おう」と語り掛けた。「中沢さんも後輩たちに歌ってもらうのを望んでいたはず」と山本さん。

 6年吉川日葉里(ひより)さん(11)は「中沢さんの歌に被爆者の怒りや悲しみだけでなく、人の優しさや希望も感じた。歌詞の意味をしっかり考えながら歌いたい」と意気込む。同校は音楽祭の後も、授業などで歌い継いでいく。

 安佐南区の安西高書道部もFFで「広島 愛の川」を題材にパフォーマンスに臨む。2、3年生9人が5日午前10時からパフォーマンスひろばで、同曲をBGMに歌詞を大書する。

 はかま姿の部員たちが縦約4メートル、横約6メートルの和紙に向き合い、長さ1メートル余りの大筆を操る。「語ろうよ優しさを」「広島の川を世界の海へ」などの歌詞をアレンジした作品に仕上げる。

 顧問で被爆2世の芥川照美教諭(53)は「戦争や原爆のことを後世に伝えるのはあなたたちの役目、と常々生徒に話している」と見守る。披露する作品は部員が話し合って決めた。部長の3年砂田舞衣さん(17)は「これまでは平和学習で学ぶばかりだった。戦争を経験した人の思いをかみしめ、みんなが平和に暮らせる大切さを伝えたい」と話す。ヒロシマを語り継ぐ若い力が芽吹き始めている。

(2015年4月28日朝刊掲載)

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