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社説・コラム

天風録 「91年間ありがとう」

 「空軍潜艦制限」の見出しが1面トップを飾った。第1次大戦を受けた世界の軍縮の流れを伝える米国発の外電である。1924年3月24日の本紙夕刊の創刊号は、意外と落ち着いた印象だ▲活字文化が興隆した大正時代。本紙の売りは地域ニュースだった。この紙面で最大の見出しは呉市の銀行支店での詐欺事件だ。師範学校卒業式、小学生が寄せた詩…。バラエティーに富むのは、今の新聞も変わらない▲社史をひもとくと一家だんらんの夕食時の話題にという編集方針である。だが戦中、戦後に夕刊は中断の憂き目に遭う。何より紙がなかったからだ。被爆翌年に復刊し、世の中が成熟した70年代に一番多く刷った▲91年を経たきのうの夕刊は国連で核廃絶の流れをつくる市長らの動きが1面に。そして発行に区切りを付けさせていただいた。お茶の間やお店でホットなニュースを話題にしてくれた読者の皆さんに感謝するばかりだ▲家族で職場で、だんらんの新たなお供に。朝刊と一緒に配達する中国新聞SELECTが、きょう産声を上げた。時代の分岐点だからこそ海の向こうの大きなニュースも、身近な情報も詳しくお届けしたい。活字の醍醐味(だいごみ)を伝えつつ。

(2015年5月1日朝刊掲載)

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