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社説・コラム

ズームやまぐち 3施設完成 どう活用 上関町 原発財源で整備

観光施策 一定の成果

 原発誘致に伴う国の特別交付金を活用した上関町の大型3施設がそろった。最後に完成した同町室津の町総合文化センターが1日、開館。中国電力の上関原発建設計画の展望が見通せない中、近くに建設した温浴施設「上関海峡温泉 鳩子の湯」と道の駅「上関海峡」との相乗効果でにぎわいを生み出せるのか。原発財源や作業員需要を当て込まないまちづくりが問われている。(井上龍太郎)

 公民館や多目的ホール、図書館が入る町総合文化センター。4月28日にあった完成記念式典で、柏原重海町長は「地域振興の中核となる施設。大いに利用され、文化に満ちた町になるよう期待する」とあいさつした。

交流人口3倍に

 観光に雇用創出、農漁業者の所得増や地域活性化―。町は、国の原発関連交付金で整備した3施設にさまざまな期待を込める。

 センター隣で昨年12月に開業した道の駅。住民が持ち込んだメバルなど旬の鮮魚や野菜、弁当が並ぶ。3月までの4カ月間の売り上げは8800万円。当初掲げた年間目標の1億5千万円を上回るペースだ。

 2011年12月に開業した温浴施設も好調だ。昨年6月に入浴者数が30万人を突破。道の駅誕生後は、前年比2割増で推移する。道の駅の高津京介駅長(46)は「クルーザーやヨットで訪れ、数日間滞在する人もいる。寄港地として栄えた昔の上関が戻ったよう」と話す。

 県によると、10年に5万7千人だった町の交流人口は13年、約3倍の15万5千人を記録した。道の駅では、当初10人だったパート従業員を7人追加。観光産業の充実を目指す町の施策は、一定の成果を上げている。

風力建設も検討

 町の15年度当初予算は一般会計で14年度比25・7%減の32億5900万円。財源不足は3億3千万円に上った。町は自主財源の確保やさらなる観光振興を目的に、同町長島の上盛山(314メートル)に大型の風力発電機2基の建設を検討する。

 上関原発は準備工事の中断から4年が過ぎた。中電の苅田知英社長は3月の記者会見で「上関は将来の二酸化炭素(CO2)削減を考えると必要となる時期が必ず来る」と原発新設の姿勢を崩さない。

 だが経済産業省は、現在進めている30年の電源構成比率を決める議論の中で「新増設は想定していない」と説明。原発計画は中ぶらりんで、地域を苦しめる状況に変わりない。

 町では任期満了に伴う町長選が、今秋予定される。原発推進派の柏原町長は、4期目を目指すかどうかについて「さまざまなことを考えており、結論に至っていない」と話す。原発誘致を柱にしたまちづくりを続けるのか否か、町は判断をあらためて迫られている。町長選での町民の選択は重い意味を持つ。

上関町室津地区の3施設
 上関原発建設計画に伴う国からの原子力発電施設等立地地域特別交付金(2009~12年度で計約25億円)を活用し、上関町が整備した。温浴施設「上関海峡温泉 鳩子の湯」は事業費9億5300万円(うち原発関連交付金8億4千万円)、道の駅「上関海峡」3億2400万円(同2億500万円)、町総合文化センター10億6200万円(同9億1400万円)。道の駅と文化センターは上関原発が不透明となったことを受け、当初計画より規模を縮小した。

(2015年5月2日朝刊掲載)

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