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上関原発計画 反対派の動議を否決 

■記者 久保田剛

 山口県上関町議会は22日の本会議で、中国電力の上関原発建設計画の白紙撤回を求める計画反対派の動議を否決した。福島第1原発の事故後、上関原発をめぐる反対派の動議否決は3月17日に続いて2回目。

 動議の提案者は「国や電力会社は、原発は大地震に耐える頑丈な施設で安全と豪語してきたが、安全神話は完全に崩壊した」と訴えた。討論では、計画反対派の別の2人が「事故が起きれば町の基幹産業である農漁業に多大な被害が出る。いったん立ち止まるべきだ」などと主張。推進派の2人が「福島原発事故の原因究明がなされ、国がエネルギー政策の方向性を示す。それらの推移を冷静に見守るべきだ」などと反論した。

 議長を除く11人で採決し、賛成は計画反対派3人の少数だった。

 中国電力は福島第1原発の事故後の3月15日から、建設予定地の埋め立て工事などを中断。国から求められた追加地質調査は継続している。3月17日の町議会本会議でも計画反対派3人が追加地質調査を含む全作業の一時中断を求める動議を提案したが、賛成は3人の少数で否決された。

<解説>原発財源 影響強く

■記者 久保田剛

山口県上関町議会が福島第1原発の事故後2度目となる「原発推進」の意思を示した。チェルノブイリと並ぶ世界最悪の「レベル7」の事故と深刻な被害を目の当たりにしても、推進派が多数を占める構図は変わらない。原発財源抜きに町に活路はないとの意識は根強い。

 町は原発立地を前提とする国の交付金を財源の柱に町づくりを進める。2010年度までの26年間の交付金は計約45億円。推進派町議は動議に反対し、「当たり前に行われている暮らしの支援がなくなり、町民に大変不便な生活を強いる」と言い切った。

 福島の事故を受け、原発立地への不安は推進派の町民や町議にも膨らんだ。しかし、「だからこそ、事故を教訓により安全な原発をつくってほしい」との声が少なくない。

 ただ、福島原発の被害が拡大し、周辺住民の避難生活は長期化。上関町の周辺市町の住民の「原発の安全性は本当に担保されるのか。上関だけの問題ではない」との声は強まっている。上関町が推進の旗を振る以上、町内の反対派だけでなく周辺市町の住民の理解を得る姿勢が問われる。

(2011年6月23日朝刊掲載)

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