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「人の英知で核廃絶を」 NPT会議でNGOセッション 被爆者、各国に求める

 今度こそ、世界から核兵器をなくす道筋をつけてほしい―。広島、長崎の被爆者が1日、米ニューヨークの国連本部であった核拡散防止条約(NPT)再検討会議の公式行事「非政府組織(NGO)セッション」で体験を証言し、各国の政府代表に廃絶を迫った。米国による原爆投下から70年。老いた被爆者の一言一言に、怒りと焦りがにじんだ。 (ニューヨーク発 田中美千子)

 5年に1度、約190カ国が繰り広げる核軍縮交渉に市民社会の声を反映させる場。20人のスピーカーの先頭を切って登壇したサーロー節子さん(83)=カナダ・トロント市=は「今、大きな希望と興奮を感じている。核兵器の非人道性に理解が広がったからだ」と英語で語り掛けた。

 広島市南区出身で13歳の時、二葉の里(現東区)で被爆。留学先の米国で平和活動を始め、カナダへ移住後も精力的に証言活動を続けてきた。国際社会でようやく、太く強くなってきた非人道性に焦点を当てて核兵器を禁じる流れ。しかし米国の「核の傘」の下にいて核兵器禁止への努力すら誓わない日本政府は流れを阻んでいるように映る。「被爆国は言葉と行動が矛盾し、国民に不信感を抱かせている」と切り捨てた。

 やはり13歳の時に長崎で被爆した日本被団協の田中熙巳(てるみ)事務局長(83)は親類を捜し歩いた爆心地付近の惨状を証言。苦しみながら亡くなった5人の最期に触れ「いずれも人間の死にざまではなかった。生き残った被爆者の魂は『二度と起こしてはならない』と叫び続けてきた」と語った。亡き仲間たちをしのび「人間が造り出した核兵器を人間の英知で廃絶できないはずがない」と法的禁止に向けた交渉の開始を訴えた。

 討議では、政府代表たちから「外交官は広島、長崎で被爆者の話を聞くべきだ」などの声が上がった。ニュージーランドのデル・ヒギー軍縮大使は「被爆者の話は核兵器の非人道性の議論を支える柱だ。力を振り絞り、足を運んでくれたみなさんに感謝し、再検討会議を通して、核兵器廃絶の前進に全力を尽くす」と誓った。

(2015年5月3日朝刊掲載)

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