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『フクシマとヒロシマ』 住民15人 微量セシウム 内部被曝裏付け

■記者 下久保聖司

原医研元所長ら「心配ないレベル」

 広島大原爆放射線医科学研究所(原医研)元所長の鎌田七男医師ら5人の専門家チームが、福島県飯舘村と川俣町山木屋地区で住民計15人の尿を検査したところ、全員から放射性セシウムが検出されたことが23日、分かった。福島第1原発事故による住民の内部被曝(ひばく)の実態を裏付けた。ただ検出量はごく微量で「今後、汚染された野菜などを食べなければ心配はない」と説明している。

 調査対象は4歳から77歳までで、飯舘村が10人、川俣町山木屋地区が5人。事故から55日後の5月5日と5月末ごろに計2回採尿し、広島大大学院工学研究院の静間清教授が100ミリリットル当たりの放射性物質量を測定した。

 2回とも全員からセシウムを検出。しかしごく微量で、今後50年間、放射線を出したとしても計0・1ミリシーベルト以下に収まる量という。ヨウ素は最初の検査で6人から検出。最も高い人は3・2ミリシーベルトだった。ただ2回目の検査で出た人はいなかった。尿などで排出されたとみられる。

 鎌田医師と、わたり病院(福島市)の斎藤紀医師は「ヨウ素が検出されなかった人がいるため、呼吸ではなく、汚染された野菜やキノコを食べたのが原因ではないか。いずれもその後出荷制限されており、総じて心配はない」と結論づけた。

 また専門家チームは15人全員に事故後の行動についてアンケートを実施。家の周辺の空間線量を加味して各個人の5月5日までの外部被曝量を推計した。その結果、最も高い人は13・5ミリシーベルトで、仮に避難しなかった場合は、国が定める年間被曝限度量の20ミリシーベルトを上回る可能性が高いと分かった。10ミリシーベルト以上は6人で、9・9~5ミリシーベルトは8人、4・9ミリシーベルト以下は1人だった。

(2011年6月24日朝刊掲載)

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