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社説・コラム

『潮流』 日米同盟と岩国基地

■岩国総局長・山岡達

 岩国市中心部のJR岩国駅から、2キロ余り離れた米海兵隊岩国基地に向かう人の列が途切れない。

 基地を一般開放する恒例のイベント「日米親善デー」が3日、海上自衛隊岩国基地の「航空基地祭」と初めて共同開催の形を取った。雨にたたられ、基地側の見込んでいた25万人以上とまではいかなかったものの、市の人口を超える約16万5千人が県内外から繰り出した。

 3年ぶりの復活となった航空ショーでは、航空自衛隊の「ブルーインパルス」をはじめ、民間チームなどがアクロバット飛行を披露し、来場者の視線をくぎ付けにした。

 4月末に訪米した安倍晋三首相は、米上下両院合同会議での演説の締めくくりでこう述べた。「私たちの同盟を『希望の同盟』と呼びましょう」

 集団的自衛権を行使できるようにと、政府は安全保障法制の整備を急ぐ。自衛隊と米軍の協力関係を強化させるためだ。

 岩国基地は、米海兵隊と海上自衛隊が共同使用をしている。今回のイベント名は「航空基地祭・日米親善デー」。共催の意義について、米側の基地トップは「2国間の協力関係を理解してもらえたと思う」、日本側のトップも「日米の絆も深まる」と語った。首相のあの演説と通じているようにも聞こえてくる。

 広大な基地内では、在日米軍再編に伴うさまざまな工事が続く。2017年ごろまでに米海軍厚木基地(神奈川県)から空母艦載機部隊が移転を予定する。市内の愛宕山地域開発事業跡地では米軍住宅や運動施設の整備も進んでいる。

 イベント当日は、憲法記念日。来場者の多くは極東最大級に変貌してゆく基地の今を実感したことだろう。日米同盟のありようを映し出している岩国基地。その進む道から目を離してはなるまい。

(2015年5月5日朝刊掲載)

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