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「被爆後の復興学びたい」 ペロシ米下院議長が本紙に回答

■記者 馬上稔子

 米国のナンシー・ペロシ下院議長(68)が、9月に広島市で開かれる主要国(G8)下院議長会議(議長サミット)への出席を前に、中国新聞の定期連載「ひろしま国 10代がつくる平和新聞」にメッセージを寄せた。被爆地で「平和と軍縮」をテーマに話し合う意義を強調。「この問題の重要性を日本の子どもにも認識してほしい」と求めている。

 議長は今回が初めての広島訪問で「平和記念公園や原爆資料館を訪れ、計り知れないほど廃虚となった都市がどう再建され、繁栄したのかを学びたい」と希望。広島での開催を「核兵器がもたらした破壊や命の喪失をありありと思い起こさせる」と評価し、核不拡散や管理の行き届かない核物質への対処に関する話し合いに意欲を見せている。

 また「若い人たちは現在の状態の世界を受け入れようとはしていない。それが未来を信じる理由」と次世代への期待を述べている。

 メッセージは7月29日、メールで届いた。5月下旬の「ひろしま国」30号で、取材などを担当するジュニアライターが、議長サミット参加国の議長全員に送った質問への回答。

(2008年7月31日朝刊掲載)

ナンシー・ペロシ下院議長の回答の全文


被爆地広島で開催 大いに期待


ナンシー・ペロシ米国下院議長


1 今回が、広島初めての広島訪問となりますか? それとも、今までに広島を何度か訪問したことがありますか?

広島へは今回が初めての訪問です。

2 広島への訪問中に、何を経験したいと思っていますか?

世界中の同僚と会い、私たちの国々が直面している大きな問題について、そして、それらに取り組むために、どうやって一緒に力を尽くすかについて話し合うことを楽しみにしています。

広島はこれからも常に、歴史の中で重要な意味を持ち続けます。広島平和記念公園や資料館を訪れ、どのように、計り知れない荒廃の場となった都市が再建され、繁栄したのかを学びたいと考えています。

3 広島でのG8サミットで、原爆と核兵器について何を期待しますか?

2008年G8会議に大きな期待を持っています。この会議は、国々のリーダーたちに世界中を苦しめる重要な問題について、率直に話し合える珍しい機会を提供してくれます。広島で開催されることにより、核兵器がもたらした破壊と命の喪失について、常時、ありありと思い起こすこととなります。このG8会議では、核不拡散や管理の行き届かない核物質への対処が重要な議題になると思います。大量破壊兵器の拡散は全ての国にとって深刻な脅威を引き起こします。そして、大量破壊兵器の拡散を止めるためには、明確で包括的な戦略が必要です。

地球温暖化や気候変動も、会議の重大な焦点となると考えています。アメリカ合衆国下院議長として、私は気候変動とエネルギー自立の問題を最も重要な問題と位置づけています。私たちはアメリカ国内では、地球温暖化の対策を講じてきました。しかし、環境、健康そして安全への脅威を引き起こすこの問題を解決するためには、他の国々と協力し、もっと全面的に取り組まなければなりません。

4 私たちは、世界中の子どもたちが平和について話し合う「子どもサミット」を広島で開催する可能性を探っています。この考えについてどう思いますか?

昨年私は「アメリカの子どもに関する全米サミット」を国会議事堂で主催しました。そして、それは議員としての21年間で最もすばらしい日の一つとなりました。そこで、私たちの最も大切な財産である「子どもたち」について、そして、子どもたちが成功するために必要な助けを確実に得られるようにするために、私達がなすべきことについて話し合いました。

5人の子どもたちの母、そして、7人の孫の祖母として、私はいつも若い人たちが何かを変えようとしている様子を見ると胸が躍ります。若い人たちは、地球規模の問題に取り組むことで力を得、次世代のリーダーとしての役割について理解を深めることができます。そして、国際的問題を自分の問題として考える感覚を発達させることに役立ちます。

議長として他国を訪問する中で、私はいろいろな国で大統領、首相、そして国王にもお会いしました。しかし、最も私を感心させ、感動させたのは、若い人たちとの出会いでした。世界のリーダーたちが、敵対する相手との間で建設的な対話を持つことができるかどうか疑問を抱いている時にも、若い人たちはメールやチャット、ブログを通じて自分たち自身の国際的な対話を行っています。彼らはより明るい未来に向けた希望や、平和や幸福への強い願いについて話し合っています。国内外の若い人達は現在の状態の世界を受け入れようとはしていません。若者たちが持ついらだちが本当の変化をもたらしてくれるのです。これが、私が未来を信じる理由です。

5 G8会議での話し合いから、平和と核軍縮について、日本の子どもたちに何を受けとめてほしいと思っていますか?

日本の子どもたちが、彼らの将来にとってこの問題がどれだけ重要なことかを認識してくれることを期待します。平和と安全保障の問題は選挙で選ばれた人々にとって、第一の責任です。これが、私たちがこの会議に集まり、私たちの世界をより安全にするために、核軍縮や管理の行き届いていない核物質を厳重に管理する重大な必要性について話し合う理由です。

6 「平和のために行動する」ということで、広島と日本の子どもたちに対して、アドバイスをしていただけますか?

対話を続けることです。前にも言ったように、世界中の若い人達は世界をどうやってよりよくするか、変化をもたらすかについて若者同士で話し合っています。彼らはこれからも相手の言葉に耳を傾け、互いに学びあわなければなりません。



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