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民喜 紙芝居で継承を 顕彰グループ会員が「夏の花」発行 「原作を読む契機に」 広島

 広島市出身の被爆作家原民喜(1905~51年)を顕彰する「広島花幻忌の会」会員の竹原陽子さん(38)=広島市中区=が、民喜の小説「夏の花」の紙芝居を発行した。被爆70年の節目に、次世代へ読み継がれる契機になればとの願いを込めている。(石井雄一)

 「夏の花」は、実家の厠(かわや)で被爆した「私」が、避難する中で目撃した惨状が描かれている。紙芝居は、物語の主な部分を抜粋。民喜の詩「水ヲ下サイ」「永遠のみどり」の2編も添えて全9場面で構成した。

 絵は、竹原さんが画用紙を切り抜くなどして表現。被爆の場面では、「眼(め)の前に暗闇がすべり墜(お)ちた」との原文に対し、短冊のような黒い画用紙を並べて貼った。「ものすごい衝撃をイメージした」と話す一方、「本来は文章から読者が自由に想像を膨らませる」と考え抽象的に描いた。

 紙芝居作りは、福山市の自宅で「のびる文庫」を主宰する西本章さん(62)から、「子どもたちに原民喜の話をしてほしい」と頼まれたのがきっかけ。竹原さんは、「夏の花」を伝えるのが民喜を知ってもらうことにもなると考えて自作し、昨夏に披露した。

 その後、西本さんが「少しでも多くの人に広めよう」と提案。のびる文庫が発行元となり100部を印刷した。竹原さんは「『夏の花』は、被爆の実態を読者の眼前によみがえらせる、強い喚起力を持った作品。紙芝居を見て、原作を読んでほしい」と願う。

 紙芝居は、朗読と歌唱のCD付きで、1620円。オカリナ伴奏は藤田智子さん=福山市=が担当し、会社員伊沢剛さん(39)=同=が録音に協力した。

 購入は、広島聖文舎Tel082(228)4914。

(2015年5月8日朝刊掲載)

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