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かき船移転 提訴へ 市民団体 「工事差し止めを」 広島

 広島市中区の元安川に浮かぶ船上飲食店、かき船「かなわ」の原爆ドーム近くへの移転をめぐり、市民団体「かき船問題を考える会」は9日、工事差し止めの仮処分と国による河川占用許可の取り消しを求め、広島地裁に提訴すると決めた。月内にも原告団を結成し、提訴する構えだ。

 かき船がドームの南約200メートルまで近づくと世界遺産の価値が損なわれるとして、この日開いた同会の世話人会で、出席した14人全員で提訴を決めた。原告団には、ドーム近くの中区大手町の住民も加わってもらう考え。金子哲夫共同代表(66)は「かき船文化は否定しないが、移転先は祈りや慰霊の地であるドームに近すぎ、平和への思いと共存できない」と述べた。

 この日、同会主催の公開討論会が中区であり、地元住民や被爆者たち約130人が参加。市の担当課長や、かき船を経営する「かなわ」の三保二郎社長(59)と意見を交わした。会側が「いったん工事を止め、話し合いの場を」と要望したのに対し、市側は「法的に問題はなく、地元にも説明してきた。計画通り工事を進める」と説明した。

 三保社長は討論会後、取材に対し「治水上の問題でやむなく移る。被爆で壊滅したのは市内全体で移転先が特別ではない」と強調。「行政が工事を止めろと言えば従うが、経営が立ちゆかなくなる」と述べた。

 かき船かなわは1963年から、原爆ドームの600メートル南の現在地で営業。治水上の問題から、市が認めた上で国土交通省が昨年12月、移転を許可。既に移転先で工事が始まっている。(川手寿志)

(2015年5月10日朝刊掲載)

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