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核の非合法化 対立根深く NPT会議 前半議論終わる 

 米ニューヨークの国連本部で開会中の核拡散防止条約(NPT)再検討会議は8日、会期前半の議論を終えた。見えてきたのは、核兵器の非合法化をめぐる「持つ国」と「持たない国」の対立の根深さだ。中東問題では、アラブ諸国が、地域唯一の核兵器保有が確実視されるイスラエルへ批判を強めている。両者の溝を少しでも埋められるかどうかが、会議の成否を左右しそうだ。(ニューヨーク発 田中美千子)

保有国と非保有国

法的枠組み 予断許さず

 会議2日目。各国政府代表の演説で、オーストリアのクルツ欧州・国際関係相(外相)は「159カ国を代表し、発言する」と胸を張った。「われわれは核兵器の非人道的な影響を憂慮している」。核爆発がどんなに悲惨な結末をもたらすかを強調し、不使用を訴えた。

 同趣旨の共同声明は3年間で6回目。核軍縮を一向に進めない保有国へのいら立ちから、賛同国は過去最多に膨らんだ。オーストリアはまた、約80カ国の支持を得て、核兵器禁止への努力を誓う作業文書も提出。他の熱心な国々も足並みをそろえ、核兵器禁止をはっきりと訴え始めた。真の狙いだった法的枠組みの制定へ、攻勢を強めている。

 一方の保有国は冷戦期に比べ核軍縮が「劇的に進んだ」とし、「核兵器なき世界」へ努力しているとアピール。米国の「核の傘」に頼る日本も、オーストリアの共同声明に名を連ねながら、従来通り「段階的な核軍縮」を支持している。

 「一部の保有国は核兵器禁止条約を警戒し、『非人道性』という言葉を使うのすら抵抗感があるようだ」。会議関係者の一人は両者の主張が折り合う点は見えにくいと指摘する。多くの非保有国の声に押され、最終文書の素案は核兵器禁止条約など法的枠組みを検討するよう促したが、そのまま採択されるのかどうかは予断を許さない。

アラブ諸国とイスラエル

放棄に向けた対話なく

 「永久に待ってはいられない」。第2委員会(不拡散)の演説で、エジプト政府代表が語気を強めた。取り上げたのは、中東の「非大量破壊兵器地帯」化に向けた国際会議。2010年の前回再検討会議が12年開催を決めたが、いまだに開かれない。いら立ちを募らせ、国連事務総長の責任で、今回会議の終了から180日以内に開くよう要求した。

 エジプトなどアラブ諸国が求めるのは、イスラエルが核を放棄すること。今回会議はパレスチナも初参加し、NPT非加盟のイスラエルを非難した。

 そのイスラエルも今回、20年ぶりにオブザーバーとして会議に姿を見せた。対話に前向きな姿勢のアピールとする見方もある一方、同国は国際会議が開かれない原因がアラブ諸国側にあるとする文書を、再検討会議に提出している。

 第2委員会の最終文書素案は、非核兵器地帯設置の重要性を指摘したものの、中東問題については具体的に記さなかった。「落としどころは見えてこない」と会議参加者は口をそろえる。週明け以降も、委員会で非公開協議を続ける。

(2015年5月10日朝刊掲載)

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