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法的枠組み 早期検討促す NPT会議最終文書素案 指導者の広島訪問も

 米ニューヨークの国連本部で開かれている核拡散防止条約(NPT)再検討会議の主要3委員会は8日、最終文書の素案をまとめ、各国に配った。第1委員会(軍縮)は「核兵器なき世界」の実現へ、国連の下、核兵器禁止条約など法的枠組みを速やかに検討するよう促す内容を盛り込んだ。被爆70年の節目に、各国の為政者たちが広島、長崎を訪れ、被爆者の声に耳を傾ける提案もした。 (ニューヨーク発 田中美千子)

 素案は核爆発がもたらす壊滅的な結末を踏まえ、NPT第6条の核軍縮義務を全うする必要性を強調。そのための法的枠組みの一つとして、期限を区切って核兵器廃絶を目指す核兵器禁止条約を例示した。2010年の前回会議の最終文書は、禁止条約を提案した国連の潘基文(バンキムン)事務総長の呼び掛けに「留意する」との表現にとどまっており、核兵器の非人道性を理由に違法化を求める国際世論の高まりを受け、踏み込んだ格好だ。ただ、違法化を警戒し、段階的な核軍縮を唱える核兵器保有国の反発は必至。最終文書の合意には、修正が今後繰り返される見通しだ。

 素案はまた、核大国の米ロにさらなる核軍縮交渉を求め、全保有国に核弾頭数、種類などを17年から年次報告するよう要求。過去の核実験が女性や子どもに与えた影響を「心に刻む」とし、包括的核実験禁止条約(CTBT)の未批准国に批准を要請した。

 各委員会は週明けから素案をたたき台に議論を深め、修正を重ねた文書を再検討会議のタウス・フェルキ議長に提出する。22日の閉会までに文書を一本化し、採択を目指す。10年は核軍縮などの行動計画を柱とする最終文書を採択したが、05年は決裂し、採択できないまま閉会した経緯がある。

核兵器禁止条約
 核兵器の開発や実験、使用などを全面禁止し、保有国に核廃棄を義務付ける条約で、現在は構想段階。国際司法裁判所(ICJ)が1996年に出した、核兵器の使用は国際法や人道法に「一般的に反する」との勧告的意見を踏まえ、コスタリカがモデル案を国連に提出。潘基文(バン・キムン)国連事務総長は禁止条約の検討を呼び掛け、2010年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議の最終文書に「(呼び掛けを)留意する」と盛り込まれた。核の非人道性に焦点を当てた議論の高まりを受け条約の交渉開始を求める動きも強まっている。

(2015年5月10日朝刊掲載)

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