×

ニュース

上関埋め立て認めず 免許延長で知事表明 原発の先行き不透明と判断

■記者 金刺大五、山本和明

 中国電力の山口県上関町への原発建設計画をめぐり、同県の二井関成知事は27日の県議会本会議で、予定地の公有水面の埋め立て免許の延長を現状では認めない考えを示した。原発の新増設を含むエネルギー政策を白紙から見直す国の方針を受け、上関の計画の先行きが不透明になったと判断。来年10月で期限が切れる免許について「新たな手続きに入ることはできない」と述べた。

 二井知事は代表質問の答弁で、上関原発の建設計画や埋め立て地の土地利用計画の先行きの不透明さを指摘。「この状況が続く限り、たとえ(埋め立て免許の)延長申請があっても認められない」とした。一方で、国のエネルギー政策に協力し、地元上関町の方針を尊重する基本姿勢をあらためて強調。「国の動向を注視する」と答えた。

 本会議後、二井知事は報道陣に対し、「上関は進めるという国の政策が出れば土地利用計画は生きる。そうなれば中電も延長申請をするだろうから、その時の状況を踏まえ、法的な判断をする」と対応に含みも持たせた。

 上関原発をめぐり、中電は2012年6月の本体着工と18年3月の運転開始を予定している。しかし、福島第1原発の事故を受け、計画は大幅な修正が必至の情勢。中断している準備工事は再開のめども立ってない。来年10月までの免許期間内の埋め立て工事完了について二井知事は「相当困難と推察される」と答弁で指摘した。

 二井知事の方針に対し、中電は「知事の判断について、事業者としてコメントする立場にない」と説明。上関原発建設について「福島の事故を踏まえた徹底した安全対策を計画に反映させ、地域の皆さまに安心していただける発電所となるよう引き続き最大限取り組む」としている。

上関原発建設計画  中国電力が山口県上関町長島に改良沸騰水型軽水炉2基(出力各137万3千キロワット)の建設を計画。約33万平方メートルの土地を造成し、うち約14万平方メートルは海面を埋め立てる。建設費約9千億円。埋め立ては2009年10月に着工したが、反対派の抗議活動でほとんど進まず、福島第1原発の事故を受けて中断。完工期間(3年)の期限が12年10月に迫り、免許の延長申請が避けられない情勢となっている。


<解説>国と中電 二重にけん制


■記者 金刺大五

 上関原発建設計画の公有水面埋め立て免許の延長について、山口県の二井関成知事は「現状では認められない」と踏み込んだ。福島第1原発の事故後の県民感情に配慮した判断と言える。一方で、国のエネルギー政策が示されるまでの先送りの印象も残る。

 二井知事は議会の答弁や報道陣の質問に対し、「現状では」「現時点では」と何度も強調。脱原発の姿勢はきっぱり否定した。

 国の新たなエネルギー政策に上関原発の推進が盛り込まれれば、埋め立て免許の延長を認めない根拠とした予定地の土地利用計画の不透明さも解消されると示唆した。

 県議会では免許の期限まで1年以上残す現時点での見解の表明に驚きの声も上がった。国に早期のエネルギー政策の提示を促し、中国電力には延長申請を控えさせるという「二重のけん制球」との見方もある。

 二井知事は4期目。来年8月で今任期が満了すれば引退すると公言している。県民感情への配慮と最終決断の先送りを両立させた見解には自身の県政の総仕上げを慎重に進めたいとの思いがにじむ。

 国の新政策の提示によって「現状では」という前提が外れる時、県民の声をどれだけ重く受け止め、最終決断するかが知事に問われる。

(2011年6月28日朝刊掲載)

年別アーカイブ