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亡き息子の闘い 無駄にせぬ 韓国の被爆2世運動家 母親が広島入り

 韓国在住の被爆2世として援護を求める運動の先頭に立った故金亨律(キム・ヒョンユル)さんの母、李曲之(イ・ゴクチ)さん(74)=韓国釜山市=が来日し、自らが被爆した広島市中区の自宅跡を訪ねた。「息子の闘いを無駄にはできない」。原爆の恐ろしさを訴え、日韓両政府に援護拡充を求める運動への思いを新たにした。

 自宅があったのは、爆心地から約2キロの現中区舟入南1丁目。日韓の支援者と1日に広島入りし、わずかに記憶が残る被爆当時を思い起こしながら、2005年に34歳の若さで亡くなった亨律さんをしのんだ。

 「人情に厚く、真っすぐな心の持ち主。私が被爆していなかったら、ずっと苦しみの少ない人生を送れただろうに」

 幼い頃から風邪をひきやすい子だったという。肺炎で入退院を繰り返し、25歳の頃、先天性の免疫疾患と診断された。被爆者差別が根強いとされる韓国で「韓国原爆2世患友会」をつくり、2世も対象とする援護制度をつくる運動に奔走したが、病に倒れた。

 李さん自身は広島で生まれ、原爆で父を失った。母と韓国へ帰り、結婚して5人の子をもうけたが、亨律さんの看病などで思うに任せない暮らしを送ってきた。今は夫とともに、息子の遺志を継いで運動に関わっている。

 「原爆は、後の家族まで巻き込んで苦しみを強いる。私たちの人権回復に力を貸してほしい」と訴えた。(道面雅量)

(2015年5月11日朝刊掲載)

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