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社説・コラム

天風録 「アポロ計画はオスプレイ計画」

 日本初の月面無人探査機の打ち上げ計画が持ち上がった。大先輩は米ソだろう。米のアポロ計画は1961年に始まり、8年後に飛行士が人類として初めて足跡を残した。ヒット曲「アポロ」の歌詞を借りれば<僕らが生まれてくるずっとずっと前にはもう>▲アポロ計画は10年余りで役割を終えた。その倍を超す年月をかけて開発され、欠陥商品との評が何かとつきまとったのが同じ国の軍用機オスプレイだ。かつて米誌に載った記事の「空飛ぶ恥」の題からして異様である▲既に列島の空に弧を描くのと同種の機体を東京の横田基地に配備したいという。空軍特殊部隊向けで、過酷な条件下での訓練も行う。「沖縄の負担回避」という大義名分を掲げるが、運用に日本の側は口出しできない▲60年前の本紙に載った外電には、重爆撃機B57が原爆を搭載しハワイから横田へ向かう、とある。朝鮮半島有事をにらむ核攻撃部隊だったようだ。その基地の名とともに、きな臭さを連想する人がいてもおかしくない▲騒音公害訴訟を闘う周辺住民たちも、むろん反発している。<僕らが生まれてくるずっとずっと前にはもう>と、計画のまま子々孫々までの昔語りになるといい。

(2015年5月13日朝刊掲載)

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