×

社説・コラム

社説 オスプレイ横田配備 またしても地元無視か

 なぜ在日米軍の負担を被らなくてはならないのか。根本的に問い直したい。日米両政府が、米空軍の垂直離着陸輸送機オスプレイCV22を東京都の横田基地に配備すると発表した。

 沖縄の普天間飛行場に駐留する海兵隊部隊に、地元の反対を押し切って導入されたMV22に続くオスプレイ配備である。2017年に3機、21年までにさらに7機を増やす計画という。

 それにしても首都の中枢に近い基地に、なぜ米本土から持ってくるのか。米軍からすれば、アジア太平洋に軸足を移すオバマ政権の戦略に沿ったものといえる。最新の装備を置き、中国をけん制する狙いも透ける。

 菅義偉官房長官が「日米同盟の抑止力を向上させ、アジア太平洋地域の安定にも資する」と歓迎したのもそのためだろう。加えて同じ空軍が沖縄県に持つ嘉手納基地に置かないことで、普天間移設問題で対立する県側へのアピールにも使える。一石二鳥といわんばかりだ。

 しかしそう簡単に前に進むはずもない。オスプレイは開発段階から墜落事故が相次ぎ、安全性の不安が拭えない。ましてやCV22は空軍の特殊作戦部隊の輸送を担い、兵士を戦地から救出するなど難しい任務や条件下で運用する。防衛省によると飛行時間当たりの事故率はMV22に比べ、3倍も高いという。

 そもそも横田基地は人口密集地に囲まれ、周辺の5市1町や住民は現状に対しても騒音や事故の懸念を訴えてきた。それを歯牙にもかけず、新たな負担を押し付けるのはどうなのか。

 日米政府とも、夜間や低空飛行訓練を行うことを堂々と表明している。住民にとっては負担がさらに増えるのは間違いなかろう。基地が集中する沖縄の人たちの苦しみが、ひとごとではなくなったともいえる。

 基地面積の半分近くを占める福生市の加藤育男市長が「これ以上の機能強化は受け入れられない。無理な話だ」と早速反発したのはもっともである。地元の頭越しに、決定してから地元に理解を求めるやり方にも不信が募っているだろう。

 横田への配備は2年ほど前に米軍司令官の発言で取り沙汰されたことがある。オスプレイが米海兵隊岩国基地を経由し、普天間に配備された同じ時期だ。その後は日米政府ともに明確な方針を示さないまま、横田基地に給油や防災訓練でMV22の飛来を重ねた。なし崩しに配備するための「地ならし」だったと言われても仕方あるまい。

 配備を前に横田周辺で環境影響調査を行うようだが、米軍に委ねられた運用なら歯止めになるとは思えない。沖縄では日米合意でオスプレイの午後10時以降の運用を制限しながら、むしろ夜間訓練は激化している。列島各地での訓練の情報も自治体にはろくに出さなくなった。

 さらにいえば沖縄の負担軽減になるとは限らない。CV22に乗り込む特殊部隊は嘉手納に駐留しており、横田に拠点を置きつつも沖縄に飛来するのは確実だろう。日本政府はそうした点をどう説明するのだろう。

 今回の事態は、沖縄からの基地機能の本土移転ではなく、在日米軍全体の増強にほかならない。同盟強化の名のもとに、地元自治体や住民を無視するような形で基地負担をやみくもに重くすることは許されない。

(2015年5月13日朝刊掲載)

年別アーカイブ