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乏しい材料 山口知事どう判断 上関原発埋め立て あす補足説明期限 

 山口県上関町の中国電力上関原発建設予定地の公有水面埋め立て免許の延長申請をめぐり、県が中電に求めた6度目の補足説明の回答期限が15日に迫る。政府は2030年の電源構成比率で原発を「20~22%」とする案を示したものの、上関原発を含む新増設を進めるのかどうかは、なお不透明。新たな材料が乏しい中で村岡嗣政知事は可否判断を迫られる。(門戸隆彦)

 昨年2月に就任した村岡知事は、中電からの5度目の回答を受けて同年5月、「免許延長の可否を判断する十分な材料がない」として可否判断を先送り。エネルギー政策における上関の位置付けについて、6度目の補足説明を求めた。

 政府は直前に閣議決定したエネルギー基本計画で原子力を「重要なベースロード電源」と位置付けたが、上関を含む新増設の方針に触れなかったためだ。

20%台を確保

 経済産業省の有識者委員会はことし4月、30年の電源構成比率で原発比率を「20~22%」とする政府案を了承した。福島第1原発事故が起きた10年度の28・6%から下げたが、20%台を確保。既存原発の再稼働や運転延長を想定する原発回帰の姿勢が鮮明となった。

 中電は一定の割合で原発が維持されることを歓迎。政府方針を踏まえ、県への回答で上関原発の必要性を説明するとみられる。

 一方、村岡知事は原発比率と新増設の関連は「明確な形で議論はされていない」との認識を示し、再度補足説明を求めることも否定しない。「回答内容は昨年と大きく変わらないのでは」との見方も県内部にはある。

住民対立なお

 中電による延長申請から2年7カ月余り。故山本繁太郎前知事から続く可否判断の先送りに、計画反対派の不満は高まる。社民党県連合代表の佐々木明美県議は「福島の事故も収束しておらず、いったん不許可にするべきだ」と訴える。

 これに対し、地元の上関町と田布施町、平生町を選挙区とする吉井利行県議(自民党新生会)は「政府の方針が示されない中、知事が許可不許可を判断するのは難しい。再度の先送りはやむを得ない」と話し、新増設をめぐる方針を政府が早く決めるよう求める。

 原発をてこにした町づくりを掲げる上関町は身動きの取れない状態が続き、推進、反対の立場に分かれた住民の対立が続く。中ぶらりんの原発計画が地域を苦しめる状況に変わりがない中、村岡知事はどんな判断を下すのか。

上関原発建設計画の埋め立て免許
 上関町長島の建設予定地の海上部分約14万平方メートルを埋め立てる計画。県は2008年に免許交付し、中国電力は09年10月に着工した。だが反対派の抗議や福島第1原発事故の影響でほとんど進まないまま、12年10月に免許は期限切れ。直前に3年延長を求めた中電の申請について、山本前知事、村岡知事とも可否判断を先送りし、補足説明を要求。村岡知事は昨年5月14日、6度目の補足説明を求めた。

(2015年5月14日朝刊掲載)

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