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社説・コラム

『記者縦横』 FFは一人一人に物語

■報道部・加茂孝之

 「一つのイベントを成功させるために、こんなにも多くの人が関わっているのだと実感した」。2015ひろしまフラワーフェスティバル(FF)のフラワークイーンの一言は、私自身も強く感じたことだった。

 被爆70年の節目のFF担当として、昨年末から取材準備に取り掛かった。本番前に掲載する特集記事や連載企画、初出場団体の紹介をはじめ、FF期間中の出稿計画作り…。FFスタッフや同僚記者の力を借りながら、何とか3日間を乗り切ることができた。

 「亡くなった恩師への恩返し」「地元の伝統芸能を後世に残したい」。取材で出会った人たちは、FFに懸ける熱意や思いをそれぞれに語ってくれた。そんな一人一人がFFを支えているのだと再認識した。

 4日の「ピース・アクト・ヒロシマ音楽祭」で象徴されるように、被爆70年のFFでは平和の尊さを発信する人たちの姿が目立った。漫画「はだしのゲン」の作者、故中沢啓治さんの詩を基に作られた「広島 愛の川」の合唱もその一つ。歌手加藤登紀子さんや広島ゆかりのミュージシャン、地元の小学生が心を一つにして、平和への思いを歌に乗せた。

 被爆体験をどう語り継ぐかが課題となる中、若い世代が先人の思いや体験、平和を願う気持ちを語り継ごうとする動きが広がったことは意義深いと感じる。

 来年は40回を迎えるFF。多くの人の晴れ舞台として、平和を願う人たちが心通わせる場として、さらに笑顔の輪が広がる「花と平和の祭典」であってほしいと願っている。

(2015年5月15日朝刊掲載)

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