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核の非人道性に言及 NPT会議 最終文書草案 保有国反発 衝突続く

 米ニューヨークの国連本部で開会中の核拡散防止条約(NPT)再検討会議で14日、第1委員会(軍縮)のロマン・モレイ議長が最終文書の草案を各国に配った。第1委の補助機関が作った素案段階から含まれていた、核兵器禁止条約などの法的枠組みを検討するよう促す記述が残っているため、核兵器保有国側が猛反発。非保有国側は「非人道性をめぐる表現が弱まった」と訴え、衝突が続いた。(ニューヨーク発 田中美千子)

 第1委は8日、過去5年間の核軍縮の評価と、補助機関で討議した今後の取り組みをそれぞれまとめた二つの素案を提示。草案はこれらを一本化し、修正も加えた。核軍縮に熱心な国々の要望を踏まえ、159カ国が核兵器の非人道性と不使用を訴える共同声明を会議で発表した点に新たに言及。半面、核兵器に頼る国々に配慮し、段階的な核軍縮を促したオーストラリアなど26カ国による共同声明にも触れた。

 この日の会合では早速、草案に関する発言が続出。フランスは「非人道性をめぐる記述が多すぎる」、米国は「核兵器廃絶に期限など設けられない」とし、核兵器禁止の動きをけん制した。非保有国側は、ここ5年間に核爆発の影響をめぐる新たな情報が示されたとする記述が草案で削られたなどと指摘して、表現の強化を要求した。廃絶期限付きの法的枠組みの交渉開始を呼び掛けるよう求める声もあった。

 一方、素案の改定時に削られた、各国の政治指導者たちに被爆地訪問を要請する記述は草案にもなかった。会合で日本の佐野利男軍縮大使も発言したが、この問題には触れなかった。発言した26カ国のうちスペインだけが「広島、長崎の原爆投下から70年になることへ言及を望んだが含まれず残念だ」と述べた。

(2015年5月16日朝刊掲載)

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