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白内障の認定 争点 原爆症広島訴訟 患者4人 先行で20日判決

 2008年に原爆症の認定基準が緩和された後、認定申請を却下された広島県内とブラジル在住の被爆者27人が国に処分の取り消しや慰謝料など300万円を求めた広島地裁の訴訟で、白内障だけを患う男女4人の判決が20日、他の原告に先行して言い渡される。病気が原爆によって引き起こされた「放射線起因性」と、治療が必要な状態にある「要医療性」が認定されるかが争点になる。(根石大輔)

 08年の基準緩和以降、原爆症の認定申請を却下された被爆者が全国各地で提訴し、勝訴が相次ぐが、白内障患者が認定された判決はない。国が認めなかった白内障患者を認定する司法判断が出れば、08年以降では全国初となる。

 訴状などによると、70~84歳の4人は1945年8月6日、爆心地から1・3~2・4キロで被爆した。その後、白内障を患い、07~08年に認定を申請したが、「放射線起因性がない」として却下されたため、11年に提訴した。

 提訴後の13年末、国は認定基準をさらに変更。白内障の被爆距離の条件を「爆心地から約3・5キロ以内」から「約1・5キロ以内」に厳しくする一方で「基準内の被爆者を積極認定する」としたが、4人は新基準でも認定されなかった。

 裁判では、4人のうち2人が放射線起因性と要医療性を、他の2人は要医療性だけを争う。国側は放射線起因性について「白内障は被曝(ひばく)線量が一定の数値を超えないと発症しない。4人が発症した原因は老化だ」と主張。4人がいずれも目薬を使っている点に関しても「点眼は治療とはいえない」と強調する。

 一方の原告側は放射線起因性について「被曝線量が微量でも発症する」「放射線が原因の白内障に特有の場所で眼球が混濁している」と強調。要医療性については「点眼は医者が経過観察で必要と判断しており治療の一環」と反論する。

 原告側の池上忍弁護士は「申請に踏み切れない白内障患者も潜在的にいる。判決で認定されれば救済の対象が広がる」と期待する。

(2015年5月16日朝刊掲載)

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