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「核なき世界を」米高校生に託す 広島の被爆者田中・李さん NYで体験証言

 原爆を投下した核大国、米国の若者に「核兵器なき世界」への思いを伝えようと、広島の被爆者、田中稔子さん(76)=広島市東区=と李鐘根(イ・ジョングン)さん(86)=安佐南区=が15日、米ニューヨーク市内の高校で、あの日の体験を証言した。5校の生徒計400人以上が、ヒバクシャの一言一言に聞き入った。(ニューヨーク発 田中美千子)

 田中さんは6歳の時、牛田町(現東区)の路上で被爆して大やけどを負い、生死をさまよった体験を伝えた。時折、この日のために学んできた英語を織り交ぜ「思い出すのがつらくて長年、わが子にも話せなかった」と吐露。「でも今は、若い人たちに伝えることが責任と思っている。もうヒバクシャは見たくない」と語り掛けた。

 李さんは「外国人も原爆の犠牲になった。その思いも代弁したい」と切り出した。在日韓国人2世。16歳の時、荒神町(南区)の路上で被爆し、大やけどを負った。体にわいたうじを取ってくれた母親の涙を振り返り、「核兵器廃絶が私たちの願いだ。米国の将来を背負って立つあなたたちに助けてほしい」と訴えた。

 生徒からは「廃絶のために何から始めたらいいか」などと質問も相次いだ。初めて被爆者に会ったというムスカン・カポアさん(16)は「心を動かされた。彼らの行動力に学び、メッセージを広めたい」と涙を流した。

 ニューヨークでは現在、国連本部で5年に1度の核拡散防止条約(NPT)再検討会議が開会中。これに合わせ、現地の非政府組織(NGO)「ヒバクシャ・ストーリーズ」が田中さん、李さんを含む広島、長崎の被爆者9人を招き、市内の高校などで50回近い証言会を開いた。

(2015年5月17日朝刊掲載)

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