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被爆地思うキューバの小道 コーラスや演奏 平和イベント20年

 キューバの首都ハバナで毎年夏に開催される被爆の記憶を受け継ぐイベントが20年続いている。地元の公共施設が呼び掛け、子どもたちが広島、長崎への原爆投下や平和の大切さを学んでいる。(藤村潤平)

 イベントは市中心部のセントロ・ハバナ区のカヨ・ウェッソ地区にある「平和の小道」である。ハトの壁画が描かれた全長約50メートル、幅約5メートルの小路で、地元の公共施設「地域の家」が毎年8月6~9日の間のいずれかの日に開催する。昨年は8月6日に、子どもたちが平和に関するコーラスや演奏を披露した。

 イベントを企画するセントロ・ハバナ区の職員マリア・エスピノサさん(57)がハトの壁画まで案内してくれた。「被爆者の思いを受け継ぎ、子どもたちの平和を願う気持ちを育てたい」と狙いを語る。普段は「地域の家」の運営責任者として、児童や生徒の放課後の活動をサポートしている。

 カヨ・ウェッソ地区は、0・81平方キロに約3万4千人が暮らす人口密集地だ。ごみの不法投棄など住環境が劣悪なことから、キューバ政府が1988年に「社会的に問題がある地区」に指定。95年に環境改善の方策の一つとして、イベントが始まった。

 創始者の一人、グラシエラ・グティエレスさん(79)は当時、地域で歴史を教えていた。「広島、長崎の被爆の歴史をもっと幼い頃から伝えていかなければ、という思いがあった」と振り返る。過去のイベントの写真や記録を示し、「当時の子どもたちは、もう立派な大人。平和の芽は育っている」と顔をほころばせた。

 地道な活動は、次第に広く知られるようになった。2010年には被爆者を乗せた非政府組織(NGO)ピースボートの一行が立ち寄り、被爆体験を直接聞く機会も得た。「ささやかではあるけれど、ラテンアメリカで一番すてきな平和イベントだと思っているのよ。広島でも知ってもらえたら光栄」。グティエレスさんは、ことし21年目を迎える活動を誇らしげに語った。

(2015年5月16日セレクト掲載)

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