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見通せぬ 核なき世界 NPT会議 最終週入り 保有国 強硬姿勢 中東問題も低調

 米ニューヨークの国連本部で開かれている5年に1度の核拡散防止条約(NPT)再検討会議は18日、会期最終週に入った。核兵器保有国は、核兵器禁止を視野に非人道性を訴える非保有国に対し、徹底抗戦の構え。焦点の一つの中東問題は、最終文書の草案が出たばかりで議論もされていない。最終日の22日までに「核兵器なき世界」へ前進する最終文書に合意できるかどうか、見通せない状況が続いている。(ニューヨーク発 田中美千子)

 15日の第1委員会(軍縮)。核兵器の非人道性の議論になると、保有国の口調は激しさを増した。草案から削られた「いかなる状況下でも核兵器が使われないことが人類存続の利益」の一文を復活するよう求める非保有国に対し、英国は「その言葉に総意は得られない。われわれの核抑止政策と矛盾する。残りの交渉期間中に政策を変えるつもりもない」と言い切った。

 非保有国側も黙っていない。「われわれには聞く権利がある。一体どんな状況下なら、誰に対して、核兵器を使うと言うのか」。南アフリカのアブドゥル・ミンティ駐ジュネーブ大使は27分に及ぶ異例の長さの演説で、切り返した。「(使われれば)みんなが犠牲になる運命なのだから、法的枠組みの議論も必要だ。保有国が柔軟性を見せなければ、会議の成果物はない」

透明性確保も争点

 開幕から3週間。非人道性についてでさえ妥協点は見いだせていない。草案は廃絶の期限を切った核兵器禁止条約を例示し、法的枠組み制定の検討も促す。保有国はこの部分に激しく反発しており、この表現がそのまま反映されるのは厳しい状態だ。

 核軍縮ではこのほか、保有国の核戦力の透明性確保も争点。草案には核弾頭数や種類などに関する詳しい年次報告を求める記述がある。軍縮の進み具合をみるのに不可欠なため、保有国がそれぞれの判断で情報を公表してはいるが、さらに進めるかどうか不透明だ。

開催手続きに不満

 もう一つ、再検討会議の成否を左右するのが中東問題だ。2010年の前回会議で合意した最終文書には、中東の「非大量破壊兵器地帯化」に向けた国際会議の12年開催が盛り込まれた。しかし、NPT非加盟で核保有が確実視されるイスラエルと核開発疑惑のあるイラン、そしてアラブ諸国の互いの不信感は根強く、実現していない。

 この問題を扱う第2委(不拡散)の補助機関は15日、国際会議を「12月15日までに開く」とする最終文書の草案をまとめた。が、18日の議論開始を待たず、アラブ諸国からは開催手続きなどに不満の声が漏れている。

 第3委(原子力の平和利用)を含め、主要3委員会が再検討会議のタウス・フェルキ議長へそれぞれの文書を提出。それを受け、会議全体の最終文書の採択を目指すことになる。非保有国の担当者の一人は「保有国との溝が深く、今はまだ、先が見通せない。個別に交渉を重ね、折り合い方を探るほかない」と話す。

(2015年5月19日朝刊掲載)

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