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社説・コラム

【解説】可否判断さらに遠のく

 上関原発の公有水面埋め立て免許の延長問題は、中国電力が免許の延長を再申請したことで、可否の判断時期がさらに遠のく可能性が出てきた。再申請の背景には、国のエネルギー政策で上関原発を含む新増設の方向性が明確になるまで免許を保有しておきたい中電の思惑がある。

 2012年10月に免許の3年延長を山口県に申請した中電。6度目の補足説明の回答期限となった15日、この1年のエネルギー政策議論を踏まえ、国の重要電源開発地点としての位置付けが変わらない現状を説明した文書を県に発送した。

 ただ4月に示された30年の電源構成比率に関する政府案は原発の割合を「20~22%」としたものの、新増設を想定しておらず、5度目の回答と内容は大きく変わらないとみられる。

 「エネルギー政策は国の専管事項」と繰り返す村岡嗣政知事から延長許可を引き出すには、さらに踏み込んだ政府の方針決定が欠かせない。ことし10月6日までとして申請した免許の延長期間が切れてしまう前に、再延長を申請する必要が中電にはあった。いったん不許可や免許の期限切れとなれば免許を一から取り直す必要がある上、建設自体ができなくなるとの声もある。

 上関原発は全国で唯一の具体的な新規立地計画。延長可否の判断が、今後の新増設計画の方向性に与える影響は大きい。村岡知事は、安倍晋三首相のお膝元のトップとして現時点で判断を示す難しさも抱える。

 中電の再申請は、県にも時間を与えるものだろう。補足説明の要求を中電に繰り返す県には「時間稼ぎ」との批判もある。判断を示せない理由を分かりやすく伝えることなしに県民の理解は得られない。(門戸隆彦)

(2015年5月19日朝刊掲載)

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