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被爆証言の方言分析 今石名誉教授が刊行

■記者 増田咲子

 県立広島女子大の今石元久名誉教授(70)が「原爆と日常」を刊行した。被爆証言の語り方や、原爆をテーマにした文学作品の表現を専門の方言学から分析した。広島、長崎の被爆者の肉声を収めたCDも添えている。

 旧制市立中2年生の時に被爆した元広島県議会議長、新田篤実さんの広島弁を交えた体験談を詳しく紹介。昨年8月6日の広島市の平和宣言で「いびせえ(怖い)」と広島弁が使われたことにも言及し、「庶民の心情に寄り添う」表現の大切さを説いている。また、翻訳され海外でも読まれている「ヒロシマ日記」(蜂谷道彦)や「黒い雨」(井伏鱒二)で表された方言についても考察した。

 今石名誉教授は約20年間にわたり、被爆者の話の聞き取り調査を続け、録音した肉声のデジタル化にも取り組んできた。「方言には人々の日常生活そのものがある。被爆の事実を生々しい語りと声で次代に伝え残したい」と話している。溪水社刊。A5判、145ページ。1260円。

(2011年7月5日朝刊掲載)

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