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「被爆地訪問」で応酬 NPT会議委討議終了 中国反発 韓国も否定

 米ニューヨークの国連本部で開かれている核拡散防止条約(NPT)再検討会議の第1委員会(軍縮)は18日、最終文書の草案改定版を討議した。最初の案にあった世界の指導者らに被爆地訪問を要請する記述が削られた問題で、日本は急きょ派遣された杉山晋輔外務審議官が復活を要望したが、削除を働き掛けた中国に加え、韓国の代表も消極的な姿勢を表明。溝が埋まらないまま、第1委の議論を終えた。(ニューヨーク発 田中美千子)

 杉山審議官は「核兵器の非人道性への認識を高めるには被爆地訪問が最も効果的だ。(訪れれば)核軍縮を急ぐ必要性に気付くだろう」と最終文書に盛り込むよう訴えた。フィリピン、オーストラリア、マーシャル諸島なども支持する発言をした。

 これに対し、中国は「この問題にこれ以上時間をかけたくないが、特定の国が歴史をゆがめるため、非人道性の話を利用するのは許されない」と反発。韓国も「NPT体制強化の問題と直接関係ない」として否定的な見解を示した。

 一方、最大の焦点である核兵器の非人道性をめぐる議論も紛糾。核兵器禁止に向けた法的枠組みの交渉開始を視野に入れる非保有国に対し、保有国側は「段階的な核軍縮」を唱え、折り合わなかった。

 第1委、第2委(不拡散)、第3委(原子力の平和利用)はいずれも総意による文書の採択を見送り、議論を締めくくった。19日の全体会で経緯を報告する。その後、再検討会議のタウス・フェルキ議長を中心に最終文書を作る。

(2015年5月20日朝刊掲載)

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