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社説・コラム

『潮流』 頼もしき10人

■ヒロシマ平和メディアセンター編集部長・宮崎智三

 平和活動サークルのリーダーや、ポーランド通、笑顔を絶やさないマイペース派…。文字通り「十人十色」という印象のメンバーがそろった。この春、海外で学びや取材に当たった中国新聞ジュニアライターの高校生4人と、広島県内の大学生6人である。

 うち8人は、アウシュビッツ強制収容所の跡やアンネ・フランクの隠れ家を訪問。ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)の悲劇を心に刻んだ。ほかの2人の高校生は、米ニューヨークで核拡散防止条約(NPT)再検討会議を取材し、国際政治の現場を垣間見た。

 「雰囲気が随分変わった」「自信が付いたようだ」。事前勉強会の講師としてメンバーを知る大学の先生たちも、帰国後の変化に驚いていた。

 それぞれ面接などで各大学が選定した一押しの学生や、作文などで選ばれたジュニアライター。現地での経験でさらに磨かれたのだろう。

 そんな10人の感想や抱負は紙面で紹介したように多種多様だ。行動を自らに課す者。証言できる被爆者がさらに少なくなっても広島は、私たちが支えると覚悟を決めた者。アジア侵略など日本の歴史にも目を向ける者。言動に頼もしさを感じることが増えた。

 とはいえ、知識・経験不足や甘さを感じる人もいよう。ただ、足らざるを批判するだけでは大人としての責任を果たしているとはいえまい。

 まずは学生たちが現地で何を学び、感じたのかに耳を傾けてほしい。31日午後1時から、報告会「ヒロシマとホロコースト」が広島国際会議場(広島市中区)である。

 18日の広島経済大をトップに各大学での報告会も始まった。取材記者によると、現場に行った強みを感じる堂々とした発表だったそうだ。

 ゴールではなく出発点―。ある学生の言葉が耳に残る。関わった大人の一人として、今後の展開に重い宿題を与えられたように思う。

(2015年5月21日朝刊掲載)

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