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笑顔と涙 分かれた明暗 白内障2人 原爆症認定 原告高齢化 「全員救済を」

 「2人でも認められたのは前進」「判決が国の姿勢に鋭い矢を突き付けた」。広島地裁の原爆症認定訴訟で、原告4人のうち2人を原爆症と認める判決が言い渡された20日、原告や弁護団は司法の判断を評価した。ただ、残る2人の訴えは退けられ、明暗が分かれた。提訴から約4年が過ぎ、全国の被爆者の平均年齢は約80歳で高齢化が進む。原告側は国に新たな救済の枠組みを構築するよう訴えた。(胡子洋、藤村潤平)

 判決の言い渡し後、認定された原告団の内藤淑子副団長(70)=広島市安佐南区=は法廷を出ると、支援者と抱き合った。あの日、生後11カ月で爆心地から約2・4キロの広島電鉄西広島駅(西区)で被爆し、47歳で白内障を患った。「2人でも認められたのは前進」と喜びながらも、全員認定には至らず「今後も一緒に闘っていく」と語った。

 その後、広島弁護士会館(中区)で開かれた報告集会。佐々木猛也弁護団長は、「老化が病気の原因」とする国の主張を退けたり点眼を治療と認めたりした判決を評価。「国の姿勢に鋭い矢を突き付けた」と興奮気味に話した。県被団協の坪井直理事長(90)は「国には心がない。ネバーギブアップ」と語気を強めた。

 一方で、認定されなかった東広島市の女性(84)は集会では何も語らなかった。終了後、「認めてもらえると思っとったけん…。提訴から長かった。率直な気持ち、もうだめじゃ」と声を落とした。

 日本被団協や原爆症認定訴訟の全国原告団は、厚生労働省で記者会見を開いた。被団協の田中熙巳(てるみ)事務局長(83)は「国の敗訴が続いているのは重大な事実。新基準にこだわらず、制度を抜本的に変えてほしい」と求めた。ことしは被爆70年。「核兵器の非人道性を証言する運動に力を注いでいく上でも、原爆症の問題には政治判断で終止符を打ってほしい」と訴えた。

控訴断念求め声明 全国原告団など国に提出 白内障2人 原爆症認定

 日本被団協と原爆症認定訴訟の全国原告団などは20日、認定申請を却下された白内障を患う被爆者2人を原爆症と認めた広島地裁の判決に関し、控訴を断念するよう求める声明を厚生労働省に提出した。

 声明は塩崎恭久厚労相宛て。2013年末に決まった新基準でも対象外とされた2人が認められたことに「判決は原爆症認定行政を痛烈に批判し、司法と行政の乖離(かいり)が埋められていないことを明確に示す」と指摘した。

 さらに「被爆70年の節目に当たり、原爆症認定の問題の最終的な解決を期したい」とし、認定制度の抜本改正も要求した。(藤村潤平)

(2015年5月21日朝刊掲載)

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