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「広島・長崎訪問」を削除 NPT会議 最終文書素案 中国の意向反映

 核拡散防止条約(NPT)再検討会議の第1委員会(核軍縮)は12日、最終文書の素案から、世界の政治指導者たちに被爆地広島、長崎訪問を呼び掛ける部分を削除した改定版を各国に配った。削除を求めた中国の意向が反映されたとみられる。会期最終日の22日まで、これらの文言の是非を含めた各国の駆け引きが続きそうだ。(ニューヨーク発 田中美千子)

 被爆地訪問は、再検討会議初日の先月27日に岸田文雄外相が一般討論演説で訴えたのを受け、今月8日に示された素案に「提案に留意する」として盛り込まれた。

 これに対し、中国の傅聡軍縮大使は11日の非公開協議の場で「歴史を歪曲(わいきょく)するものだ」として削除を求めたという。12日、国連本部で記者団に「公式、非公式を問わず多くの代表団がわれわれを支持している」と強調。「(日本政府の)目的は日本を第2次大戦の加害国でなく被害国として描くことだ」と主張し、被爆地訪問への言及は断固として拒否すると述べた。

 日本政府は、政治指導者や若者の被爆地訪問要請を含む、核兵器を持たない12カ国でつくる軍縮・不拡散イニシアチブ(NPDI)の提案が盛り込まれるよう外交努力を続ける構え。

 改定版はまた、「核兵器なき世界」に向け核兵器禁止条約などの法的枠組みの制定の検討を促すとした部分は維持しつつ、非人道性をめぐる表現が一部変わった。前文で素案は「いかなる状況下でも核兵器が使われないことが人類存続の利益」としていたが、「70年近い核兵器不使用の歴史が永久に続くことが人類存続の利益」に修正された。「極限状態」での使用を否定しない核兵器保有国の論理が反映されたとの見方が出ている。

 米国とロシアにさらなる核軍縮を促した部分でも、素案は新戦略兵器削減条約(新START)が効力を持つうちの交渉妥結を目指すよう求めていたが、「できるだけ早期の妥結」に弱めた。反核非政府組織(NGO)は「核兵器に依存する保有国や同盟国が内容を後退させた」として批判している。

(2015年5月14日朝刊掲載)

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