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広島市平和宣言 エネ政策転換 訴えへ 

■記者 野田華奈子

体験談選定委が初会合

 広島市は7日、平和宣言に引用するため被爆者から募った体験談を選定する委員会(委員長・松井一実市長)の初会合を市役所で開いた。この席で松井市長は福島第1原発事故を受けて国にエネルギー政策の見直しを求める考えも表明し、賛同を得た。市は19日の次回会合で宣言のたたき台を委員に提示する。

 会議は非公開。日本被団協の坪井直代表委員や原爆資料館の前田耕一郎館長たち委員10人が出席した。

 終了後に取材に応じた松井市長たちによると、国内外73人の被爆者から寄せられた被爆体験や平和への思いのうち、各委員が推す文章19件について意見を述べた。被爆前の日常と被爆後の惨状を対比した記述や、戦後に周囲の偏見に苦しんだ経験などの体験談などが挙がったという。

 また、松井市長は平和宣言にエネルギー政策の見直しを国に求める必要があるとして意見を求めた。委員の一人は「人類と核は共存できない」との故森滝市郎・広島県被団協初代理事長の言葉を引用して原発依存への憂慮を示すなど、エネルギー政策の見直しに言及する方針を確認した。

 初めての平和宣言の策定に向け松井市長は5月、「被爆体験や思いを次世代が共有し世界に広げることが重要」と判断し、宣言に引用する被爆者の文章を公募する方針を決定。市は6月1日から20日まで広島での被爆を対象に公募した。

 選定委員会の次回会合を経て松井市長が自ら宣言を起草する予定だが、会合を増やして議論を深める可能性もある。松井市長は「原爆をこの世からなくさなきゃいかんと、広島の立場で聞かせていただき本当に参考になった」と話していた。

 松井市長と坪井、前田の両氏を除く委員は次の通り。

 被爆体験証言者の池田精子氏▽国立広島原爆死没者追悼平和祈念館館長の岩川和行氏▽核戦争防止国際医師会議(IPPNW)日本支部長の碓井静照氏▽文筆家の大西知子氏▽映像作家の田辺雅章氏▽NHK広島放送局放送部長の秋山光智氏▽中国新聞社の江種則貴論説委員

(2011年7月8日朝刊掲載)

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