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被爆9年後 ラジオ劇に 広島の北森さん小説「星夜行」 

■記者 伊藤一亘

 広島エフエム放送(広島市南区)は、被爆9年後のヒロシマをモチーフにした、作家北森みおさん=同市西区=の小説「星夜行」(パロル舎)を基に、「ラジオドラマ星夜行―約束のリボン」を制作した。8月7日午後9時から放送する。

 「星夜行」は、12歳の少女・ムギが、路面電車の車内で家族や友達など誰かを捜している人々と出会う姿を描く。現在と過去、夢と現実が交錯する幻想的な五つの物語で構成。直接、原爆やヒロシマといった言葉は出てこないが、「あの光」「9年前にたくさんの人がこの町で亡くなった」などと暗示される。今年、書店員が広島の魅力あふれる本を選ぶ「第1回広島本大賞」にもノミネートされた。

 ラジオドラマ化は、北森さんが3月に同エフエムパーソナリティーの南田洋さん(57)に読んでもらおうと、「星夜行」を送ったのがきっかけ。一読した南田さんがラジオドラマ化を考え、北森さんと会社に提案した。南田さんは「8・6をテーマにしたファンタジー調の物語は珍しい。読者に考えさせる結末もいい。映像より、言葉でイメージを膨らませるラジオドラマに適していると思った」と語る。

 脚本は北森さん自身が担当。ヒロシマが最もストレートに表現されている第二章「夏至船」をベースに、ムギの幼少のころのエピソードなどを加えて、1時間ドラマに再構築した。

 出演は、「ドラマを聴いてほしい世代と同じぐらいの子に」と、南田さんが広島女学院高(広島市中区)の演劇部員8人に依頼。男性役にはプロの声優も加わり、脚本が完成した6月中旬から稽古に入っている。

 北森さんは「人が人を思うやさしい気持ちが交錯する物語。私の本とは違う、まったく別の作品になると思う。できるだけ多くの人に聴いてもらえれば」と話している。

(2011年7月9日朝刊掲載)

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