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被爆者ら落胆の声 広島市長「都市名なく残念」 NPT最終文書案

 NPT再検討会議の最終文書案に、被爆地広島、長崎の地名を挙げて訪問を呼び掛ける記述が盛り込まれなかったのを受け、広島の被爆者たちは22日、落胆した。

 広島県被団協(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之副理事長(73)は「被爆者としては広島、長崎の文字を最終文書案に入れてほしかった」と残念がる。再検討会議に合わせてニューヨークを訪れ、若者たちに体験を証言。被爆の実態を理解してもらえた手応えはあるが「被爆地に来た方が一層、核兵器の怖さが分かる」と力を込めた。

 「記述が復活しなかったのは遺憾だ」。もう一つの県被団協の大越和郎理事長代行(75)も語気を強めた。一方、当初案にあった核兵器禁止条約の文言も削除された点に注目。「禁止条約は今、多数の国が支持している。日本政府は核兵器の非人道性を言うなら、被爆地訪問要請と同じ熱意で禁止条約にも取り組むべきだ」と、後ろ向きな政府の姿勢を批判した。

 記述の削除を受け、再検討会議の参加者に復活を要請する文書を配った平和首長会議。会長の松井一実市長はこの日、市役所で急きょ記者会見し「個別の都市名がなく残念だ」と述べた。ただ、代わりに盛り込まれた「核兵器の影響を受けた人々や地域社会」との交流や経験の直接共有を促す記述に、「われわれの願いに対応した文言とも読み取れる。半歩、一歩前進した」と語った。(岡田浩平)

(2015年5月23日朝刊掲載)

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