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核軍縮 大幅に後退 NPT最終文書案提示 議長、保有国に配慮 全会一致の採択不透明

 米ニューヨークの国連本部で開かれている核拡散防止条約(NPT)再検討会議で、タウス・フェルキ議長がまとめた最終文書案の全容が会期末の22日、明らかになった。核軍縮の今後の方策は、法規制を含む「効果的な措置」を検討する国連総会の作業部会の設置など19項目。ただ核兵器の非保有国が求めていた核兵器禁止条約に触れないなど、当初案から大幅に後退した。全会一致で採択できるか不透明だ。 (ニューヨーク発 田中美千子)

 22日未明に参加国へ配られた議長の最終文書案は、21日に判明していた核軍縮に加え、核不拡散、原子力の平和利用についての4週間の会議の成果をまとめた。

 核軍縮の方策では、所管する第1委員会の草案で当初、廃絶までの期限を設けた「核兵器禁止条約」を含む法的枠組みの検討に言及した部分があったが、議長案では保有国への配慮から削除。核軍縮義務を全うするため、9月からの国連総会に、どの国にも開かれた作業部会を置き、法規制を含めた措置を検討するよう勧告している。

 日本が提案した世界の指導者らに広島、長崎の訪問を要請する記述は、中国の反対で素案段階で削られたまま復活していない。代わりに戦後70年の節目に「核兵器の影響を受けた人びとや地域社会と交流し、経験を直接的に共有」するよう促す記述を盛り込んだ。

 焦点の一つだった中東問題では、中東非核化に向けた国際会議を2016年3月1日までに開催するよう国連事務総長に委ねるとした。「地域の全ての国が招請される」とし、対象をアラブ諸国、イラン、イスラエルと明記。法的拘束力のある協定作りを目指し、米国、英国、ロシアと、国連事務総長が指名する特使が支援するとした。地域別の課題ではまた、06、09、13年に核実験を強行した北朝鮮に「強い遺憾の意」を示し、これ以上実施しないよう促している。

 再検討会議は22日午後(日本時間23日未明)、最後の全体会議を開き、文書の採択を目指す。

(2015年5月23日朝刊掲載)

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