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被爆者ら「最悪の結果」 NPT会議決裂 渦巻く失望と怒り

 「核兵器なき世界」へ、前進を期待した被爆地の願いはかなわなかった。核拡散防止条約(NPT)再検討会議が最終文書を採択できずに決裂、閉幕したのを受け、広島の被爆者たちに23日、失望と怒りの声が渦巻いた。(岡田浩平、村上和生)

 全国の被爆者の平均年齢はおよそ80歳。心身に刻んだあの日の体験を語り、その兵器がいかに非人道的であるかを訴え続けてきた。会議に合わせて米ニューヨークの国連本部を訪れた広島県被団協(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之副理事長(73)は「最悪の結果だ。被爆者が生きているうちに核兵器を廃絶するのはもう不可能なのか」。やり場のない怒りを募らせた。

 「二度と被爆者をつくらないという原点に立てば、こんな結果になるわけがない」。同様に渡米した、もう一つの県被団協の佐久間邦彦副理事長(70)も憤る。NPT非加盟で核兵器を持つとされるイスラエルを擁護し、米国が中東非核化に向けた国際会議の開催をめぐって反発したのが決裂の引き金となっただけに、「核抑止に頼る安全保障の考え自体を変えるしかない」との思いを強くした。

 今回の会議には被爆地の若者も駆け付けた。広島女学院高2年並川桃夏さん(16)=広島市佐伯区=は最終文書案を作る過程で、広島、長崎の地名を挙げて訪問を呼び掛ける記述が中国の働き掛けで早々に削除された経緯に注目。「核兵器を持つ国がそんなことを言っていては、廃絶なんてできない。まだ核兵器の恐ろしさが伝わっていないのだろうか」と懸念する。

 今回会議を経て、被爆国、被爆地はどう廃絶へアプローチするべきなのか。広島平和文化センターの小溝泰義理事長(67)は、最終文書案に、9月からの国連総会の下で法規制を含む作業部会の設置が盛り込まれていた点を評価。「NPT会議後に、さまざまな立場の国が一緒の場で法的禁止に向けた議論を進める基盤になる。現実にどう動かすかがこれからの課題になるので、平和首長会議のネットワークを広げ、政治指導者に行動を取らせる動きを加速したい」と話す。

 市民団体「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会」の森滝春子共同代表(76)は「核兵器禁止条約の実現へ、新たな行動を市民団体も考えなければならない。日本政府も米国の核の傘から抜けて、中心の役割を担ってほしい」と注文した。

(2015年5月24日朝刊掲載)

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