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被爆地訪問 訴え継続 NPT会議決裂 政府 国際会議を活用

 政府は25日、被爆70年を迎える被爆地で相次ぐ国際会議を舞台に、あらためて世界の指導者たちの被爆地訪問を訴える方針を固めた。22日に閉幕した核拡散防止条約(NPT)再検討会議が最終文書を採択できず、決裂したのを受けた措置。核軍縮・不拡散に向けた日本の取り組みも含め、被爆70年の非核外交を強化する構えだ。

 再検討会議では、日本が提案した世界の指導者たちに広島、長崎の訪問を要請する記述が、中国の反対により最終文書の素案段階で削除。被爆者たちとの交流を通じた「経験の共有」などの文言になった。

 だが政府は、これまで通り「広島、長崎」の地名を掲げて訪問を呼び掛ける方針を維持する。広島市で8月に開かれる包括的核実験禁止条約(CTBT)機構の「賢人会議」や、同じく同市で8月にある国連軍縮会議の場で日本の考えを積極的に発信し、各国の参加者に理解を求める考えだ。

 長崎市で11月に開かれる核兵器廃絶を目指す科学者たちの国際組織「パグウォッシュ会議」の世界大会も重視している。

 また政府は、今秋に米ニューヨークで開幕する国連総会の活用も想定。日本が中心となって呼び掛ける核兵器廃絶決議案に「被爆地訪問」の文言を盛り込めるかどうか模索する。170カ国が賛同し、21年連続で採択された昨年の決議文では言及していなかった。

 菅義偉官房長官は25日の記者会見で「核兵器のない世界に向けた取り組みに悪影響が出ないよう各国と協力して取り組む」と強調。外務省幹部も「広島、長崎という具体名を強調し、訪問して被爆の実相に触れてもらう重要性を訴えていく」と説明した。(藤村潤平、城戸収)

核拡散防止条約(NPT)再検討会議
 核軍縮や拡散防止を定めたNPTの運用状況を点検するため、加盟国が5年ごとに開く。NPTが核保有を認める米中など5カ国と、日本を含む非保有国との意見をどう調整するかが課題になっている。2010年の会議は64項目の行動計画を柱とする文書を全会一致で採択したが、今月下旬に閉幕した今回は決裂した。事実上の核保有国インド、パキスタン、イスラエルはNPTに未加盟。核兵器開発を進める北朝鮮は03年に脱退を宣言した。

(2015年5月26日朝刊掲載)

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