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「あの日」継承へ連携 ゆだ苑/山口県立大 被爆者の人生学生聞き取り HPに文章や映像

 山口県原爆被爆者支援センターゆだ苑(山口市)は被爆70年のことし、山口県立大(同)と協力して県内に住む被爆者の個人史の聞き取りに乗り出す。広島、長崎での被爆証言に加え、被爆者の歩んだ人生を文章と映像に記録することで、被爆体験と平和への思いを若い世代へ継承していく。(柳岡美緒)

 広島市出身で同大社会福祉学部の加登田恵子教授(59)=社会福祉学=と、同教授のゼミの学生9人が取り組む。ゆだ苑の仲立ちで被爆者と対面し、米国の原爆投下で一瞬にして焼け野原になった広島、長崎両市の惨状や身体的被害、後遺症などを聞く。被爆前後の人生も語ってもらう。

 加登田教授は「戦争は生命や生活の保障を壊し、原爆は耐えがたい身体的、精神的苦痛を残した。安心して暮らせる社会をつくるためにどうするべきか考える礎にしたい」と話す。

 26日のゼミでは漫画「はだしのゲン」のドラマを見て時代背景を学んだ。聞き取りは6月2日から。3年橋本佳奈さん(20)は「被爆者が受けた困難を伝えたい。話を聞く作業は緊張するが、聞いて残さなければ知らないままになる」と話す。

 計画では8月までに9人と対面。今後3年間で25人程度を目標とする。ゆだ苑職員がビデオカメラで収録。聞き取った内容は被爆者の了解を得て、ゆだ苑のホームページ(HP)に文章や映像で公開していく。

 山口県によると、県内に暮らす被爆者は3月末現在で3226人。前年に比べ208人減った。平均年齢は81・7歳。被爆時の記憶が残る世代の高齢化が進む。加えて原爆ドーム(広島市中区)などの「現場」がない県内では、被爆体験の継承に難しさが伴う。ゆだ苑の岩本晋理事長(72)は「県内の被爆者の体験を受け継ぐためにHPで公開し、広く訴えていきたい」と話している。

(2015年5月27日朝刊掲載)

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