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元韓国被害者協会長の故辛泳洙さん 原爆手帳や日記公開へ 広島

■記者 野田華奈子

 広島で被爆した元韓国原爆被害者協会会長の故辛泳洙(シンヨンス)さんの被爆者健康手帳と日記が、15日から始まる原爆資料館(広島市中区)の企画展で初公開される。長男の辛亨根(シンヒョングン)広島韓国総領事(57)が在外被爆者への関心を高めようと貸し出した。

 泳洙さんは、広島市中区にあった陸軍指定の製薬会社に勤務していた26歳の時、爆心地から約1キロの幟町電停で被爆した。顔などに大やけどを負った。帰国後は在韓被爆者の救援に力を注いだ。

 展示される手帳(縦15センチ、横10・5センチ)は顔のやけどの治療で来日していた1974年7月25日、当時の美濃部亮吉東京都知事から交付された。在外被爆者の手帳交付は初めてだった。

 日記はB6判ノートの3冊。同協会会長だった72年8月から83年5月までの日々を日本語と韓国語でつづる。72年8月の日記では、在韓被爆者の援護を求め当時の三木武夫副総理と面会するまでの経緯を記述。支援者との面会や新聞記者からの取材といったスケジュールが細かく書き込まれ、同胞被爆者の救済に奔走した姿が浮かび上がる。

 辛総領事は日記を常にそばに置いてきた。中国の赴任先にも持参し何度も読み返したという。手帳はソウルに住む弟が所持していた。辛総領事は「在外被爆者の問題に関心を持つ契機になれば」と話している。企画展初日には資料館を訪れる予定だ。

(2011年7月14日朝刊掲載)

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