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上関沖ひな確認 独自の生息域か 国天然記念物 カンムリウミスズメ 山口

 中国電力が上関原発建設を計画する山口県上関町の沖合で、国天然記念物の海鳥カンムリウミスズメのひな2羽が見つかった。繁殖を確認できているのは太平洋など外洋の離島が大半で、瀬戸内海は例がない。専門家は独自の生息域が一帯に存在する可能性を指摘している。

 北九州市立自然史・歴史博物館学芸員の武石全慈(まさよし)さん(62)=写真=が27日、原発建設予定地の南東約5・2キロの海上で確認した。ひな2羽は成鳥1羽と遊泳。羽毛の様子や20センチ余りの体長から、ふ化後4~5週間とみられるという。

 カンムリウミスズメは宮崎県の枇榔島(びろうじま)や東京都の伊豆諸島などが繁殖地で知られる。夏は北上して北海道やサハリン付近で過ごし、10月ごろ繁殖地に南下し始める。

 上関町沖でのひなの目撃は2008年以降4件目。武石さんは「このエリアで成鳥は季節を問わず観察できる。餌に恵まれた瀬戸内海西部が通常の渡りのルートに属さない生息域になっているのでは」とみる。営巣している可能性もあるとし、原発建設に伴う埋め立てや温排水による生態環境への影響に懸念も示した。

 建設予定地の造成工事は福島第1原発事故を受け、11年から中断している。(井上龍太郎)

(2015年5月29日朝刊掲載)

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