×

ニュース

櫂伝馬 被爆70年の海路 大崎上島有志 原爆ドーム経て宮島へ 伝統と平和かみしめて 広島

 大崎上島(大崎上島町)の若者たち有志が7日、櫂伝馬(かいでんま)2隻に乗って原爆ドーム(広島市中区)近くにこぎ寄せ、犠牲者を追悼する。ことしは被爆70年。島を出発、2日かけて宮島(廿日市市)を目指す恒例行事の途中に立ち寄ると決めた。実行委員会の会長で、祖母が被爆者の藤原啓志さん(31)=同町木江=は、平和の大切さをかみしめたいと準備を進めている。(山下悟史)

 行事は「旅する櫂伝馬」で、ことしは6日に島を出る。呉市で1泊、7日に広島湾に出る。例年は一気にゴールの宮島に進むが、今回は原爆ドームに向けて川をさかのぼる。36人が参加する予定だ。

 ドームに近い相生橋のあたりで、大きく輪を描くようにこぐ考えだ。「輪」を平和と和船の「和」になぞらえるという。

 藤原さんは子どもの頃から、祖母喜美子さん(86)に原爆の被害や被爆者の苦しみを聞いてきた。広島女子高等師範学校付属山中高等女学校(広島市中区)の4年だった喜美子さんは市外に疎開していた。被害を受けた校舎を片付けるため数日後に学校を訪れ、入市被爆した。同校2年だった妹は広島市で建物疎開作業中に亡くなったという。

 大崎上島町の櫂伝馬は200年以上前に始まったと伝わる。藤原さんや仲間は出発に向けて町内の艇庫に集まり、船の手入れをしたり、細かなスケジュールについて打ち合わせたりしている。

 藤原さんは「戦時中は櫂伝馬も中止になったと聞く。伝統を受け継いでいけるのは平和だからこそ。参加者は胸に刻んでほしい」と願っている。

(2015年6月1日朝刊掲載)

年別アーカイブ