×

ニュース

記憶遺産 広島市も申請 栗原貞子ら直筆 原爆文学資料 市民団体と共同 「世界へ発信」

 広島市は2日、原爆詩人栗原貞子(1913~2005年)たち被爆作家3人の直筆資料を、市民団体「広島文学資料保全の会」と共同で近く、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の記憶遺産へ登録申請すると表明した。市は「被爆体験を世界に伝えていく一助になる」として、登録準備を進めてきた同会の要請に応じた。申請に市が加わることで、原爆文学の保存、活用に向け国内外への強いアピールになると期待される。(石井雄一)

 この日、同会の土屋時子代表たち6人が市役所で松井一実市長に面会。松井市長は「広島の平和を思う気持ちと符合し、いろんな意味で協力すべき立場にあると思う」と述べ、登録実現に向けた支援を約束した。

 登録を目指す資料は、栗原貞子の代表作「生ましめんかな」が記された創作ノート▽作家原民喜(1905~51年)が小説「夏の花」の下敷きにした原爆被災時の手帳▽詩人峠三吉(1917~53年)の「原爆詩集」の最終草稿―の3点。創作ノートは広島女学院大が所蔵し、他2点は原爆資料館が遺族から寄託を受けて保管している。

 同会は昨年6月、記憶遺産への登録に向けた活動をスタート。ことし1月、市に共同申請への参加を打診し、市が検討してきた。今後、同会が作成中の申請書類の調整を急ぐ。同会の土屋代表は「広島市が共同申請者になるのは本当に心強く、登録に向けた大きな後押しになる」と話した。

 ユネスコの国内委員会は、2017年の登録を目指す記憶遺産の審査分から1国2件の枠内に絞り込むため、公募して事前審査する。公募の締め切りは今月19日。その後、9月までに選考委員会を開いて2件を選び、来年3月、ユネスコに申請する。

記憶遺産
 世界的に貴重な直筆文書、書籍や映画を保護するため、国連教育科学文化機関(ユネスコ)が1992年に創設。2年ごとに国や自治体、非政府組織(NGO)の推薦を受け審査、登録する。2014年1月時点で301件。このうち国内は、福岡県田川市と福岡県立大が共同申請した「山本作兵衛炭坑記録画・記録文書」と、政府が推薦した国宝2件の計3件。

(2015年6月3日朝刊掲載)

年別アーカイブ